半導体メーカー、エルピーダメモリが経営破綻した。韓国勢の台頭や超円高などが理由だが、主力の半導体メモリー・DRAMは産業のコメとして電子機器に欠かせない。再建へ知恵を絞るときだ。
かつて世界市場の80%を占め、一人勝ちを演じた日本の半導体メーカーが再建にあがいている。
今やエルピーダは電子機器などに広く使われるDRAMの日本唯一のメーカーであり、前身は日立製作所、NEC、三菱電機の半導体部門だ。
三社統合の最大の理由は、サムスン電子など韓国勢の躍進にある。半導体に集中投資してコストダウンを図り、低価格で日本メーカーを追い上げた。日本の有力メーカーから技術者を引き抜いて、技術開発にも力を入れている。
二〇〇〇年代半ばには、日本のシェアを奪い、世界一の座に躍り出た。半導体の市場価格が低迷しても投資を緩めず、これが「世界のトップを目指す」というビジネスの目標を実現させている。
エルピーダはリーマン・ショック後の半導体価格急落も重なり、二〇〇九年には政府が公的資金を投入して支えたが、超円高が追い打ちとなり、会社更生法の適用申請に追い込まれた。縮小するテレビ生産と同じ道を歩んでいる。
しかしDRAMの用途はパソコン、デジタルカメラ、録画機器、家電など、とてつもなく広い。
日本のDRAMが米国を席巻した一九八〇年代、米国防総省は過度の日本依存は軍用機生産など、安全保障上の問題も生じさせるとする報告書を発表した。「産業のコメ」と言われるゆえんであり、簡単には消滅させられない。
枝野幸男経産相は公的資金を使った経営てこ入れに失敗した経緯があるため「事業再生の可能性がなければ使えない」と再投入には慎重だ。それならば、DRAMを必要とする国内の製造業など、民間を中心に生産技術継続の手だてを探ることも検討すべきだろう。
エルピーダの坂本幸雄社長は、「多くのお客さまが、がんばれと言ってくれている」と語った。エルピーダは技術者の質が高いとされ、小型化や省電力が求められるスマートフォン用などに微細加工した半導体は世界的にも評価が高い。付加価値をつけ復権を果たす道筋を早急に描くべきだ。
今後の焦点はエルピーダのスポンサー企業が現れるか否かだ。東芝などが浮上しており、オールジャパンで資金調達などを支える体制を検討するよう期待したい。
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