「口」という漢字に二画を足して漢字をつくろう、という遊びを小学校の児童たちとやってみた。田、目、由、申、白、四…。ここまではすんなり浮かんだが、後が続かない▼五、六年生からはどんどん出てくる。兄、旦、司、右、石、只、占、古、叶、甲…。パソコンで字を書くことに慣れてしまい、簡単な漢字が思い出せなくなっていることを痛感した▼指導してくれた小学校の先生がこう話してくれた。「自分のペースでやれば、勉強って本当は楽しいんですよ。ゆっくりでも頂上に立てる。人と比べるから嫌いになる。嫌いだとやらなくなるから、できなくなるんです」▼大学生の24%は「平均」の意味を正しく理解していない、というニュースがあった。日本数学会が実施した調査によると、基礎的な数学力や論理的に物を考える力に大きな課題があるという▼この種の調査で真っ先に犯人視されるのが「ゆとり教育」だが、「大学全入」の時代になり、以前は進学しなかった学力の生徒が増えていることや、入学者確保のために推薦入学などの門戸を広げたことが真相に近いのではないか▼総合学習を柱に自分のペースで学び、自ら考える力を養うことがゆとり教育の理念だったが、学力低下の大合唱を受け詰め込み教育に戻ってしまった。根拠が乏しいゆとり世代への非難は、もうそろそろやめにしませんか。