HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19417 Content-Type: text/html ETag: "f36962-466e-be334600" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 28 Feb 2012 02:21:46 GMT Date: Tue, 28 Feb 2012 02:21:41 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

2012年2月28日(火)付

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 結婚式や葬式の会計は、親族や勤務先から選ばれた複数で務めるのが相場らしい。親しい仲でも、人のお金を預かるのは気が張るものだ。あちらこちらから計2千億円も預かり、大半を失ったAIJ投資顧問はかなりの強心臓とみた▼資金は海外に投じたようだが、首尾よく利益を上げているとの報告は偽りだった。運用の失敗ならまだしも、別目的に流用していたなら詐欺に近い。人のお金である▼もっとも、顧客の年金基金とて自分のお金を託していたのではない。会員企業や従業員が積み立てた虎の子なのだ。このままでは会社が埋めるしかないが、多くは本業も楽ではない運輸や建設の中小企業。そんな体力があろうか▼ゼロ金利で運用成績が上がらず、企業の年金担当者は頭を抱えている。大手の生命保険や信託銀行が四苦八苦している時に、AIJの「一人勝ち」はあまりに不自然だった。うまい話には裏がある▼欲や悩みにつけ込まれ、誠実な人ほど悪徳商法の手にかかるという。ひとたび思い込むと、おかしな点や矛盾した話が見えなくなり、他人の忠告も耳に入らない。これを「確証バイアス」というそうだ(西田公昭著『だましの手口』PHP新書)▼「投資のプロ」とはいえ、追い詰められて詐欺師に化けぬ保証はない。遅まきながら、金融庁が投資顧問会社の総点検に乗り出したのは当然だろう。少子高齢化の下で、年金をもくろみ通りもらえる確証は、官民ともに見当たらない。老後が、土台から溶けていく。

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