唯一の立法機関である国会が自らの不作為で違憲・違法状態を放置する。こんなことが法治国家で許されるのか。最高裁が違憲状態とした衆院の「一票の格差」は速やかに解消しなければならない。
最高裁は二〇一一年三月、一票の格差が最大二・三倍となった〇九年衆院選について「違憲状態」と断じ、四十七都道府県にまず一議席ずつ割り当てて定数配分する「一人別枠方式」廃止を求めた。
司法判断が出た以上、立法府は速やかに法律を改正する必要がある。それをしないのは責任放棄と糾弾されても仕方がない。
一人別枠方式を改めるには、衆院小選挙区の区割りを首相に勧告する衆院選挙区画定審議会の設置法を改正しなければならない。
さらに審議会は直近の国勢調査結果の公示から一年以内に新しい区割りを勧告するよう規定されている。一〇年国勢調査の場合、今年二月二十五日がその期限だ。
しかし、区割りや選挙制度見直しをめぐる与野党調整がつかず、期限内の勧告は難しい。当初は勧告期限を延長する設置法改正も浮上したが見送られた。二十五日を過ぎれば、違憲状態に加えて違法状態にも陥ることになる。
国会議員は違憲・違法状態が続くことを何とも思わないのか。現行の区割りのまま、衆院解散・総選挙になだれ込んだら、最高裁は「違憲」判決を下すであろう。
選挙制度改革は本来、区割りにとどまらず現行制度の見直しも含めて抜本的に行うことが望ましいが、衆院議員の任期満了まで一年半と迫る段階では難しいだろう。
まずは勧告期限を延長して違法状態を解消した上で、一人別枠方式を廃止して格差二倍未満とする区割り変更に着手してはどうか。
区割り変更を〇増五減など最小限にとどめるのなら、抜本的な制度改革は次々回からの実施を目指して有識者による「第九次選挙制度審議会」を設置し、議論を委ねてはどうか。横路孝弘衆院議長のあっせんが必要な場面もあろう。
その前提として民主党は少数政党の切り捨てにつながる比例定数八十削減を断念しなければならない。国会が身を削る必要があるのなら、議員歳費や政党助成金の削減で対応すればよい。
不毛の対立を繰り返す国会には国民の厳しい目が注がれている。選挙制度改革をめぐる各党の言い分は分からなくもないが、合意に努めず、責任を押し付け合うだけでは政治不信は募るばかりだ。
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