HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49849 Content-Type: text/html ETag: "ad720-1358-4b97bdc2f8770" Expires: Wed, 22 Feb 2012 03:21:48 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 22 Feb 2012 03:21:48 GMT Connection: close 2月22日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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2月22日付 編集手帳

 戦前、国語の浄化を目的にした詩人の団体がつくられ、佐藤春夫も会員に名を連ねた。永井荷風は日記に書いている。〈佐藤春夫の詩が国語を浄化する力ありとは滑稽至極といふべし…〉(岩波文庫『断腸亭日乗』より)◆時は流れて戦後、佐藤が選考委員を務める芥川賞を石原慎太郎氏『太陽の季節』が受賞した。佐藤は選評に書いている。〈この作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった〉◆さらに時は流れて今、石原氏が芥川賞の選考委員を降りた。〈今の作家は時代を反映していない〉〈昔は新人賞の作品は面白かったけど、全体に(レベルが)下がってきたかな〉(本紙のインタビューに答えて)◆退任した石原氏(79)と黒井千次氏(79)に代わって、奥泉光(56)、堀江敏幸(48)の両氏が新たに加わり、芥川賞の選考委員は全員が戦後生まれになるという。どういう“原石”が掘り出されるか、楽しみに待つとしよう◆荷風は佐藤を(わら)い、佐藤は石原氏に眉をひそめ、石原氏は当節の若手作家に失望を隠さない。才能とはいつの世も、先輩たちの苦言と渋面のなかで磨かれていくものなのだろう。

2012年2月22日01時25分  読売新聞)

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