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2012年2月20日(月)付

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日銀の政策―国債バブルと戦えるか

日本銀行が、金融政策の目指すべき物価安定の「目標」を明示した。デフレ脱却の姿勢を明確化するため、10兆円の追加緩和にも踏み込んだ。中央銀行があらかじめ物価上昇率の数値目[記事全文]

大阪の条例―司法の警告受け止めよ

同じ職務命令に3度違反した公務員はクビにする。そんな条例案が、近く始まる大阪府と市の議会に提出される。大阪維新の会を率いる橋下徹市長が、かねて唱えていたものだ。「卒業式[記事全文]

日銀の政策―国債バブルと戦えるか

 日本銀行が、金融政策の目指すべき物価安定の「目標」を明示した。デフレ脱却の姿勢を明確化するため、10兆円の追加緩和にも踏み込んだ。

 中央銀行があらかじめ物価上昇率の数値目標を掲げ、政策を駆使して実現する義務を負うのが「インフレ目標政策」だ。達成できなかったら、説明責任を問われる。

 日銀はこの土俵に乗ると、政策の機動性を損なうとして、これまでは分かりにくい「物価安定の理解」という形で目安を示してきた。足元では「消費者物価が2%以下のプラスで、中心が1%」だった。

 これを「物価安定の目途(もくと)」と言い換えた。内容は「2%以下のプラスで、目途が1%」と大差はない。しかし、政府・与野党では「1%のインフレ目標」と見なす空気がある。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は先月、物価上昇率2%を長期的なゴールと位置づけた。市場に中央銀行の姿勢を納得させる心理戦術の一環だ。

 日銀も同じような言い換えの利点を考え、1月から検討してはいた。政策を分かりやすく示す方がいいのは当然だ。

 だが、一連の経緯はいただけない。決定直前の国会でこれまでの説明の難解さが追及され、政治の圧力に押された印象を与えた。10兆円の追加緩和も唐突感がある。本来は4月に改める経済見通しに合わせて判断すべきだった。

 日銀の言葉遣いを額面以上に解釈し、インフレ目標政策を明確化させようとする政治圧力が強まれば、弊害は大きい。

 成長力に乏しい経済では、マネーの膨張は物価の上昇ではなく、資産バブルを招きやすい。

 ただ、人口減と高齢化が進む日本では、80年代後半のような不動産や株の先高感もなく、行き場のないマネーの多くが国債市場へ流入している。

 「安全」を求めたはずのマネーの集中は、国債価格が反転すれば、巨額の損失につながる。大きなリスクをため込む光景はまさにバブルである。

 欧州危機で世界的に政府債務への視線が厳しい。国債バブルを加速させ、財政の尻ぬぐいと見られかねない政策運営に傾斜するのは賢明ではない。

 金融政策が効果を生むには、規制緩和などを通じて実体経済を活性化する政策こそ必要だ。政治は日銀に責任を転嫁できる立場ではない。

 中央銀行は国債バブルへの警鐘は鳴らしにくいだろうが、あえて体を張り、戦わなければならない時がある。

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大阪の条例―司法の警告受け止めよ

 同じ職務命令に3度違反した公務員はクビにする。そんな条例案が、近く始まる大阪府と市の議会に提出される。大阪維新の会を率いる橋下徹市長が、かねて唱えていたものだ。

 「卒業式や入学式で日の丸に向かって立ち、君が代を歌え」という命令も対象になる。

 最高裁は先月、同じ命令に従わなかった教職員を停職や減給にした東京都の処分を取り消した。人の内心にかかわる微妙な問題だと指摘し、いきすぎた制裁に歯止めをかけた。

 だが橋下氏は「免職にする前に研修を受けさせ、誓約書を出させる。それでも違反する者は公務員にふさわしくない」として慎重論を押しきった。

 憲法が定める思想・良心の自由をどう考えているのだろう。やろうとしているのは、つまりは思想改造ではないか。

 君が代をめぐる別の訴訟で、最高裁は今月、さらに注目すべき判決を言い渡している。

 東京都の教職員が処分の事前差し止めを求めた裁判だ。都は起立・斉唱命令の違反者を、まず戒告、2〜3度目は減給、4度目以降は停職としてきた。

 これについて最高裁は、「式典のたびに処分は繰り返され、重くなる。裁判をして後から取り消しても、意味のある救済と言えない」と述べた。そして、減給や停職という重大な処分が高い確度で想定されるときは、「処分してはならない」と裁判所が命令できるとした。

 司法による行政監視を強めるため、8年前の法改正で差し止め訴訟が整備された。その趣旨にかなう踏み込んだ判断だ。

 判決に照らせば、免職は違法として差し止め、あるいは取り消され、慰謝料も認められる可能性がある。出どころは税金だ。それが、人々が維新の会に求めた府政や市政なのか。

 折しも橋下氏は、「特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるか」などの質問に答えるよう全職員に「業務命令」を出し、厳しい批判を浴びた。

 調査は凍結されたが、心の中に土足で踏み込む体質は、ここにも表れている。大阪の有権者は氏に権力を与えた。それを正しく使うために、自らの立場の重みを認識し、「おそれ」をもってもらわなくては困る。

 「こうでなければならない、こうあるべきだという思い込みが、悲惨な事態をもたらすことを、歴史は教えている」

 差し止め訴訟の最高裁判決のなかで、宮川光治裁判官はそう述べた。その説くところを、条例案を審議する議員もかみしめ、よく考えて欲しい。

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