あすはもう、二十四節気にいう「雨水」である。降っていた雪が雨へと変わり、積もった雪も解けるころ…のはずだが、さにあらず▼むしろ、所によっては、山下達郎さんの曲『クリスマス・イブ』の一節の方がぴったりくるかも。♪雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう…。天気予報によれば、今週末も寒さは厳しく、北日本や西日本の日本海側では大雪になりそうだ▼各地の梅の開花も大幅に遅れているようで、やはり春の季語の「観梅」よりは、本来は冬の季語たる「探梅」がまだぴったりくる感じ。だが、さすがに「春が来た」と実感できる時も、もうかなり近くには来ているのだろう▼そして、今年の春は、例年にも増して、素晴らしい春になる予感がある。北大路魯山人だったか誰だったか、とにかくある食通は「美食のコツは」と問われ、ひと言こう言ったのだとか。「空腹」▼寒さに震え、早く早くと願っている私たちは、春という名の“ご馳走(ちそう)”を待って、もうかなり腹ペコだ。飢餓感が強い分、春の運ぶ花を、風を、その解放感のすべてを一層ありがたく味わえるに違いない▼楽しみにしていよう。その美しい季節は、屈(かが)み込みがちだった人には飛躍の場を、何かに行き詰まっていた人にはアイデアの源泉を与えてくれるかもしれない。スプリング(spring)とは春であり、バネであり、泉である。