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社会保障と税にかかわる個人情報を一つの番号にまとめる共通番号制度(マイナンバー)の法案を、政府が国会に出した。すべての国民と法人に一つひとつ番号を割り振り、年金や医療・[記事全文]
米中両大国に横たわる数々の難問が、解決されたわけではない。だが両国とも、ともかくは受け入れられる結果といえるのではないか。中国の習近平(シー・チンピン)国家副主席が公式[記事全文]
社会保障と税にかかわる個人情報を一つの番号にまとめる共通番号制度(マイナンバー)の法案を、政府が国会に出した。
すべての国民と法人に一つひとつ番号を割り振り、年金や医療・介護、雇用保険、税務などの手続きや災害時に使う。
年金手帳や保険証はいらなくなり、写真入りのカード1枚で済む。政府は2015年までに利用を始めたい考えだ。
国や地方の財政は厳しい。所得や資産に応じてきちんと納税してもらい、本当に必要な人に漏れなく給付が行き渡るようにしなければならない。
異なる制度にまたがる情報をつなげることで、行政効率の面でも役に立つはずだ。
番号制は、消費増税でもめる社会保障と税の一体改革と関連が深い。このため国会審議にすんなりとは入れそうにない。
ただ、制度の必要性では、与野党の間に大きな争点はないだろう。一体改革と切り離して議論を進めてはどうか。
心配なのは、内閣府の調査で8割の人が「内容を知らない」と答えていることだ。
番号制は、個人情報が漏れるリスクと背中合わせだ。
独立性の高い監視機関を設けるなど、手だては幾重にも盛り込まれているが、どんな制度にも「絶対安全」はない。
安易に身分証明代わりに使ったりしないよう、一人ひとりが中身を知っておかないと、大きな被害につながりかねない。
番号の具体的な使い方を決めるのも、これからの作業だ。
たとえば、医療や介護にかかる費用に、世帯単位で上限を設ける「総合合算制度」や、消費増税にともなう生活費の増加分を援助する「給付つき」の税額控除制度。いずれも番号制導入の目玉だが、個別に法律を設けないと実現できない。
そもそも、共通番号で名寄せできる所得情報に、利子所得は入っていない。源泉徴収で金融機関が預金者をまとめて申告するためだ。
だが、本当に負担の公平性を考えるなら、利子所得や金融資産は個々に把握できるよう検討すべきだろう。
番号制をめぐっては過去に納税者番号として何度か浮上し、懐を探られることへの反発から頓挫してきた歴史がある。
このため政府は給付や減税などの「恩恵」を強調しがちだ。しかし、いいことばかりの説明では、かえって不信を招く。所得の把握を透明にする意義も、訴える必要がある。
もっと関心を持とう。国会での審議は、その一助になる。
米中両大国に横たわる数々の難問が、解決されたわけではない。だが両国とも、ともかくは受け入れられる結果といえるのではないか。
中国の習近平(シー・チンピン)国家副主席が公式訪米を終えた。
習氏は中国共産党の序列こそ6位だが、この秋に開かれる党大会でトップの総書記に選出されるのが確実視されている。来春には大統領にあたる国家主席に就任する見込みだ。異変がなければその後10年間、中国の最高指導者であり続ける。
そんな習氏を米国は国賓級ともいえるレベルでもてなした。
オバマ大統領はホワイトハウスの執務室に習氏を招き入れて会談した。国防総省は異例の礼砲を放つ歓迎の式典をした。習氏を招待した相方のバイデン副大統領は、ロサンゼルス訪問にも同行するという力の入れようだった。
米国が近未来の対中関係の重要性を見据えて歓待したのは、妥当な対応といえる。オバマ氏は習氏に「米中が強固な関係を発展させるのは死活的に重要だ」とまで語った。
中国の現在のトップである胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席も2002年に副主席として訪米した。その年に党総書記、翌春に国家主席に就任した。今回の習氏と同じ立場だった。
当時のブッシュ大統領も次のリーダーと受けとめ胡氏を歓待した。だが中国は10年を経て、国内総生産(GDP)は世界6位から2位へ、国防費5位から2位に躍進する大国になった。
中国の国際社会における責任も比べられないほど大きくなった。「顔見せ」であっても、米側が習氏に懸案を率直に持ち出したのは自然であり、超大国の義務だと評価したい。
オバマ氏は、中国の人権弾圧を提起したり、対中貿易赤字や中国人民元の過小評価に改善を求めたりしただけでなく、シリア問題をめぐる国連安保理決議案が中ロの拒否権で廃案になったことへの失望も伝えた。
大統領選を控え原則を貫くオバマ氏に対し、党大会を控える習氏も安易な妥協はできない。
政治の季節を迎えた両氏は、譲るわけにはいかなかった。だが、戦争が起きるかもしれないという中東問題などで、実りがなかったのは極めて残念だ。
米中関係がなお曲折を続けるのを想像させた習氏訪米。問題は習氏が真のトップになってからだ。経済面で離れがたい関係を、安全保障などの充実にどうつなげていくか。
米中との付き合いが宿命の日本も注視しなければなるまい。