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天声人語

2012年2月18日(土)付

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 生き物の世界で、大きい代表がゾウなら、小さい象徴はアリだろうか。ときどきアリンコなどと軽く呼ばれる。童謡「ぞうさん」の詩人まど・みちおさんは「アリ」という詩も書いている▼〈アリは/あんまり 小さいので/からだは ないように見える/いのちだけが はだかで/きらきらと/はたらいているように見える……〉。大きさに負けず小ささも畏敬(いけい)を呼ぶ。先ごろアフリカで極小のカメレオンが見つかった。全長30ミリ未満、世界最小級の爬虫類(はちゅうるい)という▼爬虫類で思うのは巨大な恐竜だが、極小カメレオンの子は恐竜そのままの風情でマッチ棒の先に乗る。その姿は小ささゆえに偉大だ。造物(ぞうぶつ)の妙は、葉っぱ一枚自力では造れぬ人知の及ぶところではない▼この星には500万から3千万種の生き物がいるとされる。だが今、1日に約100種が絶滅しているともいう。カメレオンはたまたま見つかったが、存在さえ知られないまま滅んでいく種は多い▼公開中の映画「日本列島 いきものたちの物語」を見ると、美しさと厳しさに打たれる。撮影に加わった動物写真家の嶋田忠(しまだただし)さんが、かつて本紙に「鳥の動きや飛ぶ速さに感動した」と少年時代を語っていたのを思い出す▼そして「捕まえて手で少し強く持つと死んでしまう。すごい能力とはかなさのギャップが不思議だった」と。生態系もまた、しかりだろう。人知を超えるものながら人間の手で傷んでいる。造りえぬものを壊す驕慢(きょうまん)に、もう歯止めをかけたいものだ。

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