HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 31960 Content-Type: text/html ETag: "bb157f-5d3b-5daa8b00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 17 Feb 2012 20:21:06 GMT Date: Fri, 17 Feb 2012 20:21:01 GMT Connection: close
朝日新聞社説のバックナンバー社説のバックナンバーは、下記の有料サービスでお読みいただけます。 |
野田内閣が税と社会保障の一体改革の大綱を閣議決定した。消費増税を柱とする法案を、3月中に国会に提出する。その方針に沿って、半歩進んだ。政府・与党が1月に素案を決めてから[記事全文]
核保有につながるようなウラン濃縮計画を進めるイラン。停止を求める米欧やイスラエルなどによる包囲網。双方が譲らぬまま、不測の事態にいたるのではとの危惧が強まっている。イス[記事全文]
野田内閣が税と社会保障の一体改革の大綱を閣議決定した。消費増税を柱とする法案を、3月中に国会に提出する。その方針に沿って、半歩進んだ。
政府・与党が1月に素案を決めてから40日が過ぎている。野党との事前協議が成り立たないのだから、政府・与党単独での大綱決定は当然だ。
この間の野党、とりわけ自民党には失望させられた。消費増税の必要性を認め、当面10%という引き上げ幅も同じなのに具体的な対案を示さない。
民主党のマニフェスト違反をあげつらい、政権に衆院解散・総選挙を迫るばかりだった。
もはや野田首相は、一日も早く法案を提出し、国会論戦を通じて妥協点を探るしかない。
ところが、こんな現実を前に、民主党内には相変わらずの光景が広がっている。いまだに増税反対論が根強くあるのだ。
現下のデフレ経済のもとでは増税すべきではない、国会議員や公務員の経費削減が先だ、といった意見が渦巻く。
朝日新聞の2月世論調査で、政府の増税案に賛成40%、反対46%、最大の反対理由が「国の経費削減が進んでいない」だったことも、こうした意見と重なる部分がある。
だが、菅政権以来、3年ごしの議論を経て、少なくとも党内の大勢はとうに決しているはずだ。先の党代表選で消費増税を明言した野田首相を選んだのは民主党自身ではないか。
もちろん、政官ともに「身を切る改革」は絶対に必要だ。それと同時並行で、消費増税の作業を進めるべきなのだ。
大綱が増税にあたって約束した改革のうち、国家公務員の給与削減策は、ようやく民主、自民、公明3党が合意した。残る国会議員の定数削減も早急に詰めてほしい。もっと徹底してムダを省き、歳出を削減することも欠かせない。
今後は、民主党内のとりまとめが紛糾したり、野党が内閣不信任案や首相の問責決議案提出をうかがったりする緊迫した局面も想定される。
すでに党内の最大勢力を率いる小沢一郎元代表は最近のインタビューで、法案の閣議決定にも衆院での採決にも反対する考えを明言している。
もし、最後まで増税に反対する勢力がいるのならば、たもとを分かつしかない。首相には、その覚悟を強く求める。
与野党の駆け引きが激化し、国会の混乱は避けられないだろう。そのとき首相に求められるのは、一体改革の必要性を、愚直に国民に訴えることだ。
核保有につながるようなウラン濃縮計画を進めるイラン。停止を求める米欧やイスラエルなどによる包囲網。双方が譲らぬまま、不測の事態にいたるのではとの危惧が強まっている。
イスラエルはかつてイラクやシリアの核開発を警戒し、関連を疑う施設を空爆した。今回も武力でイランの施設を破壊すれば、中東に戦火が広がる恐れがある。米欧などが介入すれば、イランに肩入れするテロが世界で続くかもしれない。中東の混乱は原油高騰をまねき、国際経済に痛撃を与えるだろう。
硬軟とりあわせた外交で、イランの方針転換を引き出す戦略が、正念場を迎えている。
問題はまずイラン側にある。相次ぐ濃縮計画の増強で、核兵器への転用は時間の問題との懸念が国際社会で高まっている。にもかかわらずイランは「あくまで平和利用」と繰り返し、停止を求める国連安全保障理事会の決議に応じていない。
安保理、米国、欧州連合(EU)などが経済制裁に動いてきたが、態度は変わらない。イランと鋭く対立するイスラエルでとくに警戒感が強く、強硬論が頭をもたげている。
手遅れになる前に、外交決着へと進める戦略の立て直しが必要だ。イランは強硬姿勢を見せる一方で、安保理の5常任理事国にドイツを加えた6カ国との協議に前向きな書簡をEUに送っている。これを足がかりに突破口を見いだしたい。
武力衝突はイランを危うくするもので、外交による事態好転の方が結局は、イランの国益にかなう。言を尽くして、そこを説くべきだ。
制裁などによる包囲網だけでなく、譲歩への誘い水も必要になってくるだろう。
イランが平和利用を強調するなら、いったん濃縮活動などを止めて、国際原子力機関(IAEA)の徹底的な査察を受け入れることが先だ。そして、国際協調によるウラン濃縮の管理と運営の道をさぐってはどうか。そうすればイランの核武装を阻めるのではないか。
イスラエルは事実上の核保有国である。イランに核疑惑があるからといって独断で軍事行動に出れば、国際社会で批判の的になるのは必定だ。テロによる報復が国民の命や生活を脅かす危険もある。
野田佳彦首相は、来日したイスラエルのバラク副首相に自制を求めた。今後ともイラン、イスラエル双方に外交決着を強く働きかけていくことだ。
それが、中東原油に依存する日本の国益にも資する。