オリンパスの旧経営陣ら七人が金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。財テクに失敗した損失を長年、隠し続けた事件である。粉飾決算の実像を正確に暴き、世界の批判に応えねばならない。
「経営の中心部分が腐っていた」−。オリンパスの損失隠し問題を調査した第三者委員会にそう非難された事件だ。東京地検と警視庁による旧経営陣らの逮捕で、本格的な刑事責任追及の口火が切られたといえる。
第三者委員会の調査に対し、守秘義務を盾に協力を拒んできた外国の金融機関やファンドなどがある。不正への加担を否定している幹部もいる。調査の限界を超えた腐敗の実情を捜査でまず解明する必要がある。どんな手段で損失を隠し、粉飾を重ねてきたのか、全体像を描き出してもらいたい。
不可解なのは、東京証券取引所が先月下旬、決算報告に巨額な虚偽があったにもかかわらず、「株式市場に与えた影響が重大とはいえない」と判断したことだ。同社は上場廃止を免れ、企業統治に問題がある場合に指定される「特設注意市場銘柄」となった。
損失隠しは「一部の関与者のみによってなされた」と東証はいうが、逮捕されたのは企業のトップや監査役の座にあった人物である。しかも、三代の社長にわたって隠蔽(いんぺい)が続いていたのである。英国人元社長が問題視しても放置し、逆に元社長を放り出したほどだ。これこそ悪質な会社ぐるみの犯罪ではなかろうか。
隠されていた損失額は千三百億円を超える。十三日に発表された二〇一二年三月期の業績見通しでは連結売上高は八千五百四十億円で、それと比べても巨額すぎる損失額なのだ。実際、純損益も三百二十億円の赤字に陥る見通しだ。東証の審査は甘くないか。今後の捜査を踏まえ、審査のやり直しを検討すべきである。
全国の株主らが「株価が下落して損失を受けた」として集団訴訟を起こした事実も重い。
確かに内視鏡ではシェア七割という世界ブランドで、同社の持つ先端技術は技術大国の誇りである。
そんな名門企業トップの犯罪だからこそ、日本型経営そのものが世界の目には不信に映るのだ。
すでに大手企業が資本・業務提携に名乗りを上げ、四月には経営陣が刷新されるが、真の信頼回復の道程は険しい。これを契機に、企業経営、企業統治の在り方を抜本的に改善してほしい。
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