HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 50009 Content-Type: text/html ETag: "f67ad-134e-4b8eefe728fca" Expires: Wed, 15 Feb 2012 02:21:20 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 15 Feb 2012 02:21:20 GMT Connection: close 2月15日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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2月15日付 編集手帳

 「ポアロ」はアガサ・クリスティの推理小説に登場する架空の名探偵である。最後の登場作品で他界したとき、ある米紙は1面に黒枠の死亡記事を掲載したという◆〈有名なベルギー人の探偵エルキュール・ポアロ死す〉。推理作家、夏樹静子さんの随筆集『往ったり来たり』(文芸春秋)に教わった。編集者の遊び心ではあれ、それだけ多くの人々に愛された証拠でもあったろう◆架空の人物というのではないが、訃報に接した気持ちはいくらか似ているかも知れない。“おばちゃん”が亡くなった。映画『男はつらいよ』シリーズで親しまれた女優の三崎千恵子さんである。90歳という◆旅から帰った寅次郎のみならず、映画館の観客にとっても葛飾・柴又の家があれほど居心地が良かったのは、気さくで涙もろい三崎さんの“おばちゃん”がいたからだろう。気がつけば、寅も、“おいちゃん”も、御前さまも、タコ社長も、いつのまにか皆いなくなってしまった◆物語の設定とは知りつつも、「身寄りのないさくらが不憫(ふびん)だな…」と、ふと思う。シリーズが終了してもう17年になるのに、不思議な映画である。

2012年2月15日01時21分  読売新聞)

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