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裁判員が参加した一審では無罪だった。ところがプロの裁判官だけで審理した二審は有罪。どちらが「正しい」のか。地裁と高裁の結論がわかれた裁判で、最高裁は一審を支持する判決を[記事全文]
大阪市の橋下徹市長が代表を務める大阪維新の会が、次の衆院選に向けた公約集「船中八策」の骨格をつくった。これまで主張してきた都市制度や公務員、教育改革に限らず、外交、経済[記事全文]
裁判員が参加した一審では無罪だった。ところがプロの裁判官だけで審理した二審は有罪。どちらが「正しい」のか。
地裁と高裁の結論がわかれた裁判で、最高裁は一審を支持する判決を言い渡した。
妥当な判断といえる。
外国で知人からあずかった荷物の中に覚醒剤が入っていた。密輸の罪に問われた被告は、荷物の中身は知らなかったと訴えた。二審が逆転有罪とした昨年春、私たちは社説でこの判決に疑問を投げかけた。
一審の結論を高裁がひっくり返すには、よほど説得力のある理由と説明が必要だ。安易に認めれば、刑事裁判にふつうの人の感覚を反映させようという裁判員制度の意義が揺らいでしまう――。そう主張した。
最高裁の判断も、ほぼこれと重なる。「一審判決が間違っているというためには、論理や経験則などに照らして不合理な点があることを、具体的に示す必要がある」と述べ、この事件の場合、一審のような見方も否定できないと結論づけた。
二審の審理のあり方をめぐっては、ともすれば一審と同じスタートラインに立ち、証拠をゼロから評価したうえで「真相」を明らかにしようという傾向があると言われてきた。
職業裁判官の責任感の表れかもしれないが、もともと二審の役割は「事後のチェック」だ。裁判員時代を機に、最高裁が高裁に意識の切り替えを迫ったと見ることができよう。
もちろん、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則がある。有罪判決を無罪の方向で見直すことまで抑制的になるのは、最高裁の意図するところではあるまい。
判決は、一審を担う裁判官、検察官、弁護人の使命が重いことを改めて浮き立たせた。
一審を尊重すべき大きな理由のひとつは、書面による審理が中心の高裁や最高裁と違い、関係者からじかに話を聞く点にある。文字を通してではわからない微妙なニュアンスや表情、態度を踏まえて判断する強みは、なにものにも代えがたい。
カギとなる証人は法廷に呼んで適切な尋問を行い、証言に耳を傾ける。日ごろからそんな充実した審理を心がけることによって、一審への信頼をより高めていかなければならない。
国民の司法参加が決まって以来、法律が定める姿と実務の溝を埋め、捜査や公判を透明でわかりやすいものにしていこうという流れが生まれている。今回の判決も、その重要な一歩と位置づけることができる。
大阪市の橋下徹市長が代表を務める大阪維新の会が、次の衆院選に向けた公約集「船中八策」の骨格をつくった。
これまで主張してきた都市制度や公務員、教育改革に限らず、外交、経済、社会保障など幅広い分野に言及している。
衆院選で300人を擁立し、200議席をめざすという。
地域の政治団体が国政に乗り出して国を変えようとすることを否定はしない。しかし、大阪都の実現を目標としていた維新の会が、国政での大量議席獲得にかじを切った理由が十分説明されたとはいいがたい。
昨年11月の市長選直後、橋下市長は「大阪都実現がゴール。国を変えるのは国会議員で、市長の僕が考えるのはやりすぎ」と言っていた。
国政進出は、他党から「都構想への協力が得られなければ」という限定付きだった。
実際、自民やみんなの党は協力姿勢を示し、地方自治法の改正案を提案している。
そんななかで、さらに大きな目標を立てて突っ走る。「国盗(と)り」こそが真の目的だったということだろうか。
市長就任から約2カ月。橋下氏は矢継ぎ早に改革の方針を打ち出しているが、いずれも緒についたばかりだ。地域政党として「国の政党と一線を画す」「大阪再生をめざす」という同会の設立趣旨もそのままだ。
維新の会は橋下氏個人の人気で勢力を広げてきた。ところが橋下氏は自身の衆院選出馬を否定する。国政を握ろうとする党のトップが自治体の長にとどまる是非も今後問われるだろう。
公約集には、参議院の廃止や首相公選制といった改憲が前提となる案、年金の掛け捨て制など既存の枠組みを抜本的に変える発想が含まれる。問題意識を並べたアイデア段階ともいえる。世に問うには、党内でもっと議論を煮詰める必要がある。
一方で来月開講する維新政治塾には3千人以上の応募があり、候補者予備軍となろう。
スピード感を持って既得権益に挑む橋下氏の姿は、公約を実現できず毎年のように首相が代わる国の政治と好対照をなし、力強く映る。
しがらみのない地域政党なら何かをやってくれそうだという漠とした期待も生んでいる。
世論調査の結果からも、政治に新風を吹き込む勢力として、維新の会が相当の支持を集めているのは事実だ。
既成政党は、維新の何が世間を引きつけるのか考えるべきだ。根っこにあるのは、今の政治全体に対する不信感である。