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しばしば使われるのに、意味を聞かれると説明しづらい語がある。「個性」はその筆頭格だろう。個性を伸ばす、個性を育む、などと言うが、さて個性とは。昨今の就職活動では「個性を封印する」という表現も聞こえてくる▼「封印」の象徴が黒のリクルートスーツなのだという。あまりの画一化に風を入れようと、「服装自由化」を学生に勧める企業をアエラ誌が報じていた。ソニーなどの有力企業も試みているが、笛吹けど踊らず。説明会はやはり黒の上下で埋まるそうだ▼気持ちは分かる。超氷河期のいま、就活は「人生をかけた椅子取り」にも例えられる。得点より減点が怖いとき、周りから「浮く」のはそれなりの勇気がいる。黒はいわば、無難という名の保護色なのだろう▼夏目漱石が「草枕」に書いていた。「文明はあらゆる限りの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付けようとする」。この一節が、どこか今の就活に重なる▼幼時からの教育はさかんに「個性」を言う。しかし社会に出る学生は、指南本やセミナーの説く寸法に合わせてノウハウの尾ひれをつけ、就活戦線を泳ぐ。個性も、総体としての多様さも、色あせないかと心配になる▼むろん個性は外見よりむしろ中身だろう。とはいえ服装一つでも、同調圧力に抵抗力のある人は頼もしい。小器用に空気を読む人ばかりでは組織の活力も生まれまい。人との違いを楽しめる。そんな個性を応援したくなる。