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天声人語

2012年2月11日(土)付

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 共和党の米大統領だったレーガンはユーモアを失わない人だった。暗殺未遂に遭い胸の弾丸の摘出手術を受けるとき、医師団を見回して言った。「君たちがみんな共和党員であることを願っているよ」。二大政党が競い合う米では、共和と民主は何かにつけて仲が悪い▼医師の返答も語りぐさだ。「大統領閣下、きょうは全員共和党員をそろえております」。手術が成功したから笑えるが、ひるがえって日本である。執刀医に「当直明けでないことを願っているよ」と言いたくなる実情が浮かび上がっている▼日本外科学会の調査では、外科医の7割が当直明けの手術を経験し、うち8割が手術の質の低下を実感しているという。当直明け手術が「いつもある」が31%、「しばしば」が26%と聞けば、心穏やかではいられない▼医療事故につながりかねない体験も4%にあった。捨て置けないと見た厚労省は、当直明けの手術を減らす病院の診療報酬を優遇することにした▼川柳作家の故・今川乱魚(らんぎょ)さんの闘病句を思い出す。がん告知からの日々をたゆまず詠み続けた。〈命預け候(そうろう)手術承諾書〉。そして〈お白洲(しらす)の浴衣でのぼる手術台〉。俎板(まないた)の鯉(こい)の側としては、睡眠不足でメスを持たれるのは勘弁願いたい▼それもこれも、病院の多忙ゆえだという。医師、看護師、そして病院全体の「心技体」が充実してこそ、気の弱りがちな患者も励まされる。負担の軽減は医療界あげての急務だろう。仁術とは言うものの、精神主義では続かない。

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