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日米両政府が、在日米軍再編見直しの基本方針を発表した。沖縄・普天間飛行場の移設と3点セットだった海兵隊のグアム移転と、嘉手納基地より南の5施設の返還を、普天間とは切り離[記事全文]
雪の被害が広がっている。この冬、9日までに全国で83人が亡くなった。04年の新潟県中越地震を上回る人数だ。何が危ないかは、はっきりしている。[記事全文]
日米両政府が、在日米軍再編見直しの基本方針を発表した。
沖縄・普天間飛行場の移設と3点セットだった海兵隊のグアム移転と、嘉手納基地より南の5施設の返還を、普天間とは切り離すことにした。
返還合意からすでに16年、いっこうに動かぬ普天間とは別に、できるところから着手しようというわけだ。従来のかたくなな姿勢を改めたことは評価する。今後の交渉で、具体的な成果につなげてほしい。
両国政府はこれを機に、在日米軍基地の4分の3が集中する沖縄の過重な負担を、確実に削っていくべきだ。
地元にとって、とくに重要なのは、人口が多い本島中南部に広がり、産業振興などの足かせになっている基地の返還だ。
市街地に近い基地の跡地を再開発すれば、新たな雇用の場や経済効果も望める。那覇新都心や北谷(ちゃたん)町のハンビータウンといった先行例もある。しっかり実現させることを望む。
海兵隊のグアム移転は、8千人だった計画を、4700人に縮小する見通しだ。残りは豪州やフィリピンなどにローテーションで派遣するという。
もともとは、14年までに移転を終えるはずだった。具体的な手法とともに、改めて明確な期限を設ける必要もある。
兵員の規模が小さくなるのだから、その経費の日本側の拠出も減らすのが当然だ。
国の安全保障にかかわる負担は、国民全体で分かち合おうという観点に立てば、本土の基地で一部を受け入れることも検討すべきだろう。過去にも実弾演習を北海道や大分県などに分散移転させている。
ただ、米側に打診された山口県の岩国基地は、空母艦載機59機と兵員・家族4千人が神奈川県の厚木基地から移る。性急なさらなる負担には無理がある。
日米両政府は、負担軽減の実績をあげることで、普天間の辺野古移設への理解を得たい、事態打開の機運をつくりたいという思いだろう。
だが、普天間の県外・国外移設を求める沖縄の固い民意が変わる見通しはない。
両国政府がこの現実を見誤ったまま、従来の方針にこだわり続ければ、普天間を固定化させるだけだ。米国側でさえ「事故が起きない方が不思議だ」という危険な施設を、放置することは許されない。
改めて指摘する。
もはや、辺野古移設は白紙に戻すしかない。今回の方針転換を、堂々巡りの議論から抜け出す出発点にすべきだ。
雪の被害が広がっている。
この冬、9日までに全国で83人が亡くなった。04年の新潟県中越地震を上回る人数だ。
何が危ないかは、はっきりしている。
内閣府が昨冬の被害を分析したところ、亡くなった人の8割は除雪作業中だった。その半分が屋根からの転落だ。
死者の3人に2人は、1人だけで作業していた。そして、3人に2人が65歳以上だった。
雪下ろしは1人でしないで、と内閣府は呼びかけている。とりわけお年寄りは注意が要る。
雪国は、お年寄りの割合が高い。大都市とちがって一緒に暮らす若い世代も多いのだが、昼は街へ働きに出ていて、雪下ろしや雪かきはお年寄りが担うことが多い。仕事で除雪する建設業者は、公共工事が減った影響で、10年で14%減った。
そこで、豪雪地帯533市町村の半数は、地元の助けあいや外からのボランティアで、人手不足を補っている。そういう助っ人には、お年寄り世帯の雪かきを頼むことが多い。
一例として、山形県の最上町と尾花沢市を見てみよう。
最上町には、東京都の板橋区役所から職員15人が、2泊3日の雪かき支援に訪れた。
去年の春、原発事故で東京の金町浄水場の水から基準をこえる放射性物質が検出された。そのとき、最上町からペットボトル2万本の飲み水を届けてもらった。そのお返しだ。
尾花沢市には、宮城県岩沼市と大崎市の職員30人が応援に来た。やはり震災のとき、尾花沢市の職員70人が岩沼市へ行き、給水や炊き出しを手伝ったいきさつがある。
いずれも、震災で受けた応援への恩返しだ。先方の市や区とは防災協定を結ぶ間柄だった。他地域と絆を強めていたことが雪との闘いに生きた。
肩ひじを張ったものでなくてもいい。尾花沢市にはいま、兵庫県の大学生3人が交流を兼ねた雪かき体験に訪れている。市が続けているグリーンツーリズムの一つという。
もちろん、外からの力に頼るばかりではない。最上町では、町の職員全員が「地域づくり協働隊」として44の集落に割り振られ、ひとり暮らしのお年寄りの家や危ない場所を見まわり、住民と除雪計画を練る。尾花沢市では、地元中学生90人がボランティアに加わる。
雪への対策を、都市部との交流や、地域づくりのてこにする。災いを活力に転じようとする知恵は、雪の少ない地域にも参考になる。