HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 51129 Content-Type: text/html ETag: "f2e91-169c-4b8763ad905f6" Expires: Thu, 09 Feb 2012 02:22:20 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 09 Feb 2012 02:22:20 GMT Connection: close 2月9日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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2月9日付 編集手帳

 日露戦争で旅順を攻略した陸軍大将、乃木希典(まれすけ)に『凱旋(がいせん)』という漢詩がある。〈野戦攻城(しかばね)山を()す/()我何(われなん)(かんばせ)あってか父老(ふろう)(まみえ)ん/凱歌(がいか)今日幾人(こんにちいくにん)(かえ)る〉◆戦死者は山をなした。どの面さげて兵士の親御さんに会えよう。凱旋の今日、何人が帰ったか…。兵士の勇敢さに頼った無理な作戦が戦死者を増やしたといわれる。(ざん)()の念に(さいな)まれての表白であったろう。二人の息子を戦場で失った乃木自身も憂いの深い「父老」の一人である◆昔の部下に宛てた手紙が見つかった。自刃する2年前1910年(明治43年)7月の消印がある◆戦死した息子たちについては「愚父ノ面目ヲ添ヘタル…」と語るのみで、自身の悲しみには触れず、ここでも戦死した将兵に「申譯(もうしわけ)ナク」と謝罪している◆唐突ながら、ふと思い浮かべた言葉がある。昨年9月、和歌山県那智勝浦町の町長さんは台風の大水で長女を亡くし、夫人も行方不明になった。そのさなか、町民の安否確認と救護に忙殺されつつ、取材に語っている。「ここ(役場)では私的なことは胸にしまってある」と。いつの世も職責とは残酷なものである。

2012年2月9日01時16分  読売新聞)

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