進化論で知られるチャールズ・ダーウィンに「世界の歴史に重要な役割を果たしてきた」と言わしめた地味な生き物をご存じだろうか?▼答えはミミズ。絶え間なく土の中をかき混ぜて、ふんをすることで土壌の通気を良くし、植物の成長を可能にする働き者である(ジェリー・ミニッチ著『ミミズの博物誌』)▼頼まなくても土の中でせっせと土壌改良をしてくれるミミズも、放射能による汚染とは無縁ではなかった。福島第一原発から約二十キロ離れた福島県川内村の警戒区域内に生息するミミズから、一キロ当たりで約二万ベクレルという相当高い放射性セシウムが検出されたという▼森林総合研究所(茨城県)の研究員が昨年八、九月に福島県内三町村の国有林で採取した結果、先日、「帰村宣言」をしたばかりの川内村で最も高い数値が出た。空中の放射線量が高い地点ほど、ミミズの放射性セシウムの数値は高かった▼事故で放出された目に見えない放射性物質は、風に乗って漂い、山林の木の葉に付着した。やがて落ち葉になって分解された有機物をミミズがエサとする土と一緒に体内に取り込んだ▼たかだかミミズ、と言うなかれ。鳥などの野生動物のエサになり、食物連鎖という形で他の生物に放射性物質が蓄積される可能性を研究者も指摘している。美しい山林はどこまで汚されたのか。ミミズも教えてくれている。