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小泉八雲に「占の話」という随筆があって、挿話がおもしろい。昔の中国で、ある男が瓦を枕にして眠っていると、1匹の鼠(ねずみ)が顔を走った。怒って瓦を投げつけたが、鼠には当たらずに割れてしまう▼男は軽率を悔いて破片を眺め、そこに刻まれた字に気づく。「卯(う)の年の四月十七日、巳(み)の刻に、この瓦は枕になったあとで、鼠に投げられて砕ける」。あまりの的中に男は驚き、焼く前の粘土瓦に予言を書いたという老人を探しに出かける――。首都圏直下型地震の確率をめぐる最近のニュースに、ふと思い出した▼東大の研究者は4年以内に70%と試算した。片や京大の研究者は5年以内に28%とはじく。政府は前から30年以内に70%と言っている。当たり前だが「瓦」のように、日時予測とはとてもいかない▼予知の技術は未確立で、しょせん「見果てぬ夢」という人が多い。無用論もある。将来どれほど進んでも、地震が結局、ある日突然の辻斬りなのは変わるまい▼かつて話を聞いた学者が予知の困難を語っていた。「たとえば火山の一生を人の一生とすれば、いつ噴火するかは、その人がいつくしゃみをするか、という感じでしょうか」。くしゃみは鼻がむずむずするが、地震はもっと予兆がとらえにくい。46億歳の地球に聴診器をあてる難しさが分かる▼確率の数字はばらつくが、どれも十分大きな「警告」だという。他人まかせでない身近な防災と減災を考えたい。忘れた頃ではない。忘れる間もなく、天災はやってくる。