復興庁が十日、発足する。大震災から十一カ月を経て、ようやくだ。遅れた主因は政治の混乱だ。被災地をこれ以上、落胆させてはならない。迅速かつ柔軟な対応で東北再生をけん引していきたい。
復興庁のトップは野田佳彦首相兼務で、専任の担当大臣には平野達男復興相が内定している。組織上は他府省より格上に位置付け、大臣に各府省への勧告権を与える。予算の要求から配分までを担うが、実際の事業は各府省が執行する。縦割りの弊害が排除できるかどうか疑わしい。
政府・与党は本庁を東京に置くことにこだわった。国会対応と関係府省の連携が重要という理由だ。常勤職員は約二百五十人。盛岡、仙台、福島市の三復興局と宮古、釜石、気仙沼、石巻、南相馬、いわき市の六支所、八戸、水戸市の二事務所を合わせ現地勤務は九十人程度にとどまる。
全体の六割強が本庁に勤務する必要性はあるのか。陳情はまたぞろ東京に出向かなければならないのか。首相が言う「ワンストップで、きめ細かな対応」ができるのか、疑問は多い。せめて副大臣は被災地に常駐してもらいたい。
住宅再建と高台移転▽がれきの広域処理▽雇用の確保▽被災者の心のケア▽原発事故避難者の帰還支援−と重要な課題はめじろ押しだ。専門的な知識も、マンパワーも必要だ。手慣れている全国各地の自治体職員や民間、NPOのノウハウを生かしてほしい。
復興交付金の第一次申請が締め切られた。自治体が独自で行う防潮堤のかさ上げは全額国費の交付金に該当しない。湾内の浚渫(しゅんせつ)にも使えない。国が限定した四十事業に当てはまらない懸案が出ている。被災地でしか分からないニーズはまだまだ多いだろう。復興局・支所は、まず「ご用聞き」に徹しなければならない。
復興特区と合わせ国の用意した制度が使いにくい場合は、自治体側が特例を提案する仕組みも設けられた。そのための国と地方の協議の場はぜひ、現地で開いてほしい。議論の中身は当然、公開してほしい。それを支援するのも復興庁の役割だ。
復興庁は二〇二〇年度までの時限組織で、三年後に見直す規定がある。縦割りの弊害が生じたり、屋上屋を架すような事態が明らかになれば、即時改善を図るべきだ。その際、国の出先機関改革と連動させた検討を求めたい。地方移管される東北広域連合が、事業執行まで一貫して担えるからだ。
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