オイルショック、サラリーマン、キャッチボール、ダンプカー…。脈絡がないようでも共通点がある。いずれも英語圏で通じない「和製英語」だ▼ウォークマンもそうだった。しかし、音楽を持ち歩くという時代を先取りした商品は爆発的に売れ、オックスフォード英語辞典に掲載される言葉になった▼トリニトロンカラーテレビや小型ビデオカメラなど、革新的なヒット商品を生み出してきたソニーの凋落(ちょうらく)が激しい。二〇一二年三月期決算の純損益は二千二百億円の赤字に陥る見通しになった。パナソニックなどと同様看板だったテレビ事業の不振が原因だ▼「ハードとソフトの融合」を提唱し続けながら、エレクトロニクス部門の巨額の赤字を解消できなかったハワード・ストリンガー会長兼社長は退き、平井一夫副社長が社長兼最高経営責任者として経営を引き継ぐが、再生への道程は厳しい▼アップルの創始者故スティーブ・ジョブズ氏は、独自の技術へのこだわりが強かったソニーの製品を敬愛していた。ソニーが買収を考えた時期もあったアップルの株式の時価総額は今、ソニーの約二十倍になっている▼「家電製品はネットワークに繋(つな)がるための『端末』に過ぎない」というストリンガー路線(立石泰則著『さよなら!僕らのソニー』)が踏襲される限り、世界が愛したブランド力の輝きを取り戻すのは難しい。