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天声人語

2012年2月7日(火)付

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 先の小欄で国連の名事務総長だったハマーショルドについて書いたら、たくさん便りをいただいた。その名のついたニューヨークの公園の写真を送って下さった人もいて、懐かしく眺めた。国連近くの小さな公園で開かれる色々な集会を、在米中によく取材したものだ▼抗議の集会がそこでは多い。中国からの独立を訴えるチベット人のハンストもあった。ミャンマーの人は自国の民主化を叫んでいた。多くは少数派と呼ばれる人たちだ▼そうした「抗議する人」が昨年暮れ、米誌タイムの恒例の「今年の人」に選ばれたのは記憶に新しい。「アラブの春」をはじめ、勇敢に抗議した人々が変革を生んだからだ。だが、その春から1年、抗議の波及したシリアがいま血に染まっている▼5千人以上が死亡というから、もはや大量殺戮(さつりく)だ。反体制派も武器を取って内戦が危ぶまれる。なのに、頼るべき国連が、またぞろの機能不全である。武力弾圧の停止を求める決議案が安保理で葬られた▼拒否権を行使したロシアと中国を、米などは激しく難じる。しかし米は米で、イスラエルに不利な採決には拒否権を連発してきた。大国のご都合主義と思惑がぶつかり、惨劇に手を打てない図が変わらない▼死して半世紀、今も敬愛を集めるハマーショルドは国連をこう語ったという。「人類を天国に連れて行くために作られたのではない。地獄に落ちるのを防ぐために作られた」と。詩人にしてリアリストだったその人が、天界で嘆いていないか。

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