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東京電力福島第一原発の事故を受け、警戒区域や計画的避難区域の除染をどう進めていくか。政府が工程表をまとめた。両区域の除染は国が自ら計画を作り、業者と契約する。区域は、放[記事全文]
認知症のお年寄りや、精神障害で判断の力が衰えた大人のために、財産や生活を保護するのが成年後見制度だ。全国で14万5千人が使っている。この制度の信頼を揺るがしかねない事態[記事全文]
東京電力福島第一原発の事故を受け、警戒区域や計画的避難区域の除染をどう進めていくか。政府が工程表をまとめた。
両区域の除染は国が自ら計画を作り、業者と契約する。区域は、放射線量を基準に4月にも三つに再編する。工程表は、それに基づくものだ。
まず、避難指示解除準備区域(放射線量が年20ミリシーベルト以下)、次に居住制限区域(20〜50ミリ)で本格的に除染作業を始め、今後2年程度で終えることを目指す。帰還困難区域(50ミリ超)については、実施時期が示されなかった。
放射線量での区分に対し、地元では反発や疑問が強い。機械的な線引きは集落を分断させ、地形など自然条件にもそぐわない、との主張だ。
飯舘村は集落ごとに除染を進める原則を打ち出し、「標高の高い地域から作業する」という方針を示した。家屋の周辺を除染しても、雨が降ると周囲の山林から放射性物質が流れ込んでくるためだ。
こうした地元の意向を、国はしっかり受け止めてほしい。除染は復旧・復興への第一歩だ。地元の自治体が自ら案を練り、主体的にかかわってこそ、ふるさとの再建が可能になる。
除染を国の直轄事業としたことで自治体の事務負担は軽くなったが、地元の考えが置き去りにされては、汚染土壌の仮置き場の確保も進まない。
同様の危うさは、業者との契約でもあてはまる。
被災市町村の役場などを対象に国が先行して始めた除染モデル事業では、大手ゼネコンが安値で受注する例が目につく。今後見込まれる公共工事の獲得を狙った先行投資のようだ。
除染には人手がいる。多数の作業員を集められる大手の参入は必要だろう。
ただ、地元の業者や住民がゼネコンの手足になるだけなら、「ふるさとを自らの手で取り戻す」という機運に水をさしかねない。安値受注で作業がいい加減になったり、被曝(ひばく)をできるだけ減らす対策がおろそかになったりしないか、課題は多い。
帰還困難区域の工程表を空白にしておくわけにもいかない。市町村の復興計画に照らし、除染が必要となる地域では作業を急がねばならない。
同時に、帰還を長期間あきらめざるをえない地域では、住民の意向を把握し、他の地域への移住など、さまざまな選択肢を用意すべきだ。
除染も、ふるさとを離れる人への支援も一体だ。国と自治体は意思疎通を密にしてほしい。
認知症のお年寄りや、精神障害で判断の力が衰えた大人のために、財産や生活を保護するのが成年後見制度だ。全国で14万5千人が使っている。
この制度の信頼を揺るがしかねない事態が続いている。本人に代わり、財産の管理や介護保険などの契約をする後見人が、その立場を悪用した事件がたくさんおきているのだ。
最高裁が調べたところ、昨年6月までの13カ月間で、後見人になった親族による財産の着服が少なくとも239件、総額26億3千万円にのぼった。
後見人の約6割を親族が占めるが、弁護士や社会福祉士ら専門職が選ばれることもある。不正は専門職にも及んでいる。
沖縄では、後見人に選ばれた県司法書士会の元会長が、計4人の財産約1億3千万円を自分の投資に流用していた。
事態を見すごせないとして、最高裁は今月から後見制度支援信託を始めた。これは、後見される人の財産の大半を信託銀行に預け、日常生活などに使うお金を預貯金として後見人が管理するものだ。
最高裁は信託の契約時には専門職がかかわると想定しているが、その後は親族が後見人を務めることができるため、費用は安く済むと見込む。
福祉や法律の専門職らがチームで支援する「法人後見」は、不正防止のためにも利点が大きい。まだ全体の3%にとどまるが、社会福祉協議会をはじめ、引き受ける団体は増えている。
北九州成年後見センター「みると」では、法律専門職と福祉専門職、事務局職員の3人がチームを作り、ひとつの後見事務を担う。可能なかぎり、家族からの相談をほかにまわさず対応できるよう心がけている。
金銭の出し入れをする係の職員は別にいる。金銭管理を一人の担当者に集中させず、出し入れの透明さを保っている。
同じ事務室には、社会福祉協議会が運営する権利擁護・市民後見センター「らいと」が入っている。こちらでは、地域のネットワークを生かしながら世話をする「市民後見人」が活動している。
親族間にもめごとがあるなど難しい案件は「みると」で、そうではないものは「らいと」で扱う。そんなふうに臨機応変な取り組みをして、ほかの自治体から見学が続いている。
これからも続く高齢化で、成年後見制度の利用はさらに増えるだろう。手軽に使えて、後見してもらう人への真の支援になる仕組みを、各地で築いていきたい。