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経済産業省の有識者会議で検討されていた家庭向け電気料金の見直し案がまとまった。広告費や寄付金は原価への算入を認めない。人件費は、社内平均ではなく同規模の企業平均並みに抑[記事全文]
日本経済を支えてきた電機メーカーで、巨額の赤字が相次いでいる。この3月期決算では、パナソニック、ソニー、シャープの3社だけで計1兆3千億円に迫るすさまじさだ。急激な円高[記事全文]
経済産業省の有識者会議で検討されていた家庭向け電気料金の見直し案がまとまった。
広告費や寄付金は原価への算入を認めない。人件費は、社内平均ではなく同規模の企業平均並みに抑える。修繕費や設備投資、機器の調達費も入札などで効率化し、厳しく査定する。
当たり前と言えば、当たり前の内容である。
見直しのきっかけは、第三者委員会による東京電力の経営調査だった。調べてみると、電力の供給に直接関係のないあれやこれやが「原価」に計上されていた。経費の見積もりも、かなり甘い疑いがあった。
電気料金は90年代以降、工場などの大口部門から電力事業への新規参入が認められるのに伴い、少しずつ自由化された。
一方、家庭向けは電力会社の強い抵抗で独占状態が維持されたことから、政府が料金を規制してきた。
今回の調査は、電力会社が見積もる費用に基づき料金を決める「総括原価方式」のもと、政府の規制といいながら、電力会社の言い値がまかり通っていたことを物語る。
さらに、過去5年平均で家庭向けの販売電力量が全体の38%なのに、営業利益の91%を稼いでいたこともわかった。企業向け料金を抑える原資として、家庭向けを割高にしてきた可能性がある。
ところが、電力会社は大口契約に関する情報開示を拒んでいる。「自由化されている」という理由からだ。
確かに、大口分野は制度的には自由化されてはいる。だが、送電網を握る大手は割高な利用料をとったり、さまざまな条件を課したりして、参入を阻んでいるのが実態だ。自由化市場で新規事業者が占める割合は、4%にも満たない。
利用者の選択肢を増やし、経済を活性化させるうえで、電気料金はすべて自由化すべきだ。しかし、事実上の独占を温存したままでの自由化では、電力会社の思うつぼになる。
当面は電力会社の「原価」を厳しく査定しつつ、公正な競争環境を急いで整えなければいけない。送電網を大手の支配から切り離す。不当な条件は排除する。透明な料金制度へ、電力システム改革は不可欠だ。
先日、大口料金の17%アップを発表した東電の社長は「値上げは権利だ」と主張した。過酷なグローバル競争下での経営を強いられている企業は、さぞや苦々しい思いだったろう。
これ以上、電力会社の「お手盛り」を許してはいけない。
日本経済を支えてきた電機メーカーで、巨額の赤字が相次いでいる。この3月期決算では、パナソニック、ソニー、シャープの3社だけで計1兆3千億円に迫るすさまじさだ。
急激な円高と欧州危機、大震災、エコポイント特需の反動など、様々な要因が重なった。
ただ、その背後には、国際的な競争力が衰えつつあるという深刻な問題が横たわる。
象徴がテレビ事業だろう。
かつてブラウン管テレビで世界市場を支配した日本メーカーは、得意の微細加工技術を生かして液晶やプラズマパネルの市場を切り開き、薄型テレビ時代もリードした。
ところが、韓国、台湾勢の追い上げで状況は一変した。中でもサムスン電子とLG電子の韓国2社は、大量生産による値下げで販売を増やし、収益を再び投資に回す循環を作りあげて日本勢を抜き去った。「ポスト液晶」とされる有機ELを使った大型テレビの開発でも先頭に立っている。
日立製作所はテレビの自社生産から撤退し、社会インフラ・産業部門に力を注ぐ。だが、家電が主力のメーカーはテレビを捨てるわけにはいかない。
高精細で極薄の製品を追求するだけでは苦境から抜け出せない。発想を切り替え、新たなコンセプトで勝負するしかない。
単品からシステムへ――関係者が口にするキーワードだ。
米アップルは、携帯音楽プレーヤーと音楽ソフト配信、多機能情報端末とソフトのネット販売システムを組み合わせ、売り上げを一気に伸ばした。
米国ではテレビでも、パソコンの機能を組み込み、インターネットで様々な使い方を楽しむ「スマートテレビ」が増えつつある。テレビは端末の一つ、という時代も遠くないだろう。
住宅全体を一つのシステムととらえ、家電をはじめ様々な機器をネットで結ぶ「スマートハウス」も有望だ。太陽光発電や蓄電池などを接続した省エネ住宅では、テレビが機器の作動状況やエネルギーの需給を示す表示板の役割も果たす。
パナソニックは住宅機器や電池を扱う子会社を本体に取り込み、攻勢をかける。環境関連は日本勢が得意とする分野だ。
アップルが公表した取引先156社のうち、日本企業は32社を数える。パナソニック、ソニー、シャープも名を連ねる。
技術力は健在だ。部品の供給役にとどまってはさびしい。アップルと真っ向から勝負する、そんな元気な日本企業をもう一度見たい。