HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 51641 Content-Type: text/html ETag: "a3849-17da-4b811b345e5f4" Expires: Fri, 03 Feb 2012 22:21:12 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 03 Feb 2012 22:21:12 GMT Connection: close 食品の放射能 厚労省は規制値案を再考せよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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食品の放射能 厚労省は規制値案を再考せよ(2月4日付・読売社説)

 実態を踏まえない規制ということだろう。

 厚生労働省がまとめた食品中の放射性物質に関する新たな規制値案を、文部科学省の放射線審議会が厳しく批判している。

 導入したとしても、「放射線防護の効果をさらに高める手段になるとは考えにくい」という。

 新たな規制値案は、東京電力福島第一原子力発電所の事故直後に設けられた現在の暫定規制値よりも、格段に厳しい。例えば、飲料水中の放射性物質の規制値は20分の1に、一般食品の場合は5分の1に引き下げる。

 だが、効果はわずかだ。食品を通じた個人の被曝(ひばく)線量は、新規制値でさらに0・008ミリ・シーベルト減ると推計されているが、「年間1ミリ・シーベルト以下」という厚労省の目標は、実態調査では、もう達成されている。消費者にメリットはない。

 放射線審議会は、専門家19人で構成されている。放射線の規制を設ける際は、ここに意見を求めるよう、法令は定めている。

 ただ、審議会が「待った」と言えるのは、安全上、問題のある緩い規制に対してだけだ。今回のような規制強化に是正は勧告できない。かわって効果の薄さを指摘する異例の注文で、新規制値案に事実上の「ノー」を突きつけた。

 「消費者の安心のため」と、過剰な規制の厚労省案を作るよう指示したのは小宮山厚労相だ。

 そもそも、厚労省の算出手法に問題がある。国内産の食品がすべて放射性物質で汚染されているという極端な前提で計算した。

 実態は異なる。国土の大半は放射性物質の大量飛散と無縁だ。飛散地域も懸命に生産物を検査したうえで出荷している。関係者には許容しがたい前提だろう。

 厚労省は、新規制値案を国際標準の手法で算出した、とも強弁している。だが、厳しい基準設定で知られる欧州も、飲料水は厚労省案の100倍、食品で10倍以上緩い規制値だ。

 厚労省は、4月からの新規制値導入を目指している。だが、生産地では検査の負担が増す。作付け制限も広がろう。「地域経済に大打撃だ」と懸念する声もある。

 規制は、放射線のリスクだけでなく、農業などの産業再生が妨げられるリスクも勘案して、総合的に判断しなければならない。

 放射線リスクゼロを求める一部消費者への迎合では、経済や社会に混乱と不安を広げるだけだ。

 小宮山厚労相や厚労官僚は、行き過ぎた食品の新規制値案を再考すべきである。

2012年2月4日01時20分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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