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2月4日付 編集手帳

 「わが家では、会話はすべて五七五七七でやるんだ」。子供の頃、(うそ)をついても相手は本気にしたという。祖父信綱、父治綱とつづく歌人の家に生まれ、友人たちからはよほど特殊な家庭環境と思われたらしい◆歌人で早大名誉教授でもある佐佐木幸綱さん(73)の歌集『ムーンウォーク』が、今年の読売文学賞・詩歌俳句賞に選ばれた◆これまでの代表歌では、例えば、〈ジャージーの汗(にじ)むボール横抱きに(われ)駆けぬけよ吾の男よ〉。あるいは〈水で割るな薄めてはいかんウイスキーが時代の酒でありし日のこと〉。血潮の脈動が活字から伝わってくるような“男歌”で知られている◆ほとばしる生命の躍動を透明な抒情(じょじょう)に昇華させたのが受賞歌集かも知れない。同じ酒の歌でも、〈一人飲む酒はみどりの湖の心の岸に霧は流れて〉。男はこういうふうに年を取りたいものだと思わせる歌が幾つもある◆一昨年死去した河野裕子さんに、若き日の佐佐木さんを詠んだ一首があった。〈学者歌人それもよけれど幸綱氏大食漢としてまづ印象す〉。受賞者紹介の肖像写真で拝見した男性的な風貌に、ちょっと面影がある。

2012年2月4日01時20分  読売新聞)

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