今年生まれた子どもが三十代半ばになったとき日本の人口は一億人を切ってしまう。急激な人口減にあらためて驚く。少子高齢化を乗り切るには、女性の活力を開花させることがカギになる。
現在の人口約一億二千八百万人が三十六年後には一億人を割り込む。国立社会保障・人口問題研究所が日本の将来推計人口を発表した。五年ごとに発表される。
五十年後には今より約四千百万人、実に三割強も減る。街を歩く人の三人に一人がいなくなる。子どもも働く世代も五割前後減る。
一方で、六十五歳以上は増え、人口に占める割合は約四割になる。人口ピラミッドの形がコマのように逆三角形になる。
遠い未来の話ではない。孫子の世代には現実になる社会だ。
女性一人が産む子どもの数は、前回調査より少し持ち直した。特に三十代半ばから四十代前半の女性でわずかに上がった。
これまで経済的な理由などで出産を控えていた女性たちが子どもを産んでいる。
晩産でも子どもを持ちたいと考える女性がいることに勇気づけられる。ただ、産みたいときに産めない社会では困る。
人口の減少を少しでも抑え、社会の活力を上げるには女性が結婚・出産・子育てをしながら働ける社会環境にすることが大切だ。
産科医不足で産む場所がないようでは安心して産めない。子どもを預ける保育所などの整備は早急な対策が要る。子育てと仕事が両立できる職場環境も整えたい。
人口が一千万人に満たないスウェーデンでは、経済成長のために取り組んだのが女性の就労支援だった。先進国では女性の社会進出が進むと出生率が高くなる傾向にある。女性の進出を支えるには長時間労働など男性の働き方の見直しもセットだ。
同時に、低収入から結婚も難しい非正規労働の若者は、男女問わず雇用対策が急務になる。
介護の充実も重要だ。まだまだ女性が家庭で介護を支えている。男性の介護者も含めその負担を軽くして働けるようにする。
推計では五十年後の平均寿命は男性で八十四歳、女性で九十歳を超える。第二の人生がさらに延びる。もはや老後ではない。働きたい高齢者も活力を生む戦力だ。
政府は社会保障改革で子育て支援を重要な柱に据えたが、医療や介護など多くの分野で女性を支える政策に取り組むべきだ。
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