HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 31 Jan 2012 23:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:EU財政協定 不況に追い打ち懸念も:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

EU財政協定 不況に追い打ち懸念も

 欧州連合(EU)が加盟国の財政規律を強化する新しい協定の締結で合意した。財政赤字の歯止めになる一方、財政運営を硬直化させ、結果的に不況を一段と加速する懸念もある。もろ刃の剣だ。

 EUには、これまでも各国の財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内とする財政安定化協定があった。だが、実際には独仏などが違反しても容認されてきた。

 今回の新協定は財政赤字をGDPの0・5%以内と旧協定の基準より一段と厳しくしたうえ、憲法への明記など法整備も求めた。3%を超えた場合は自動的に制裁金を科す。

 協定には英国とチェコを除くEUの二十五カ国が合意した。三月の首脳会議で正式に決めた後、来年一月の発効を目指している。

 EUが各国の財政運営に厳しい枠を設けたのは、欧州債務・金融危機が深刻化したためだ。世界の金融市場は欧州の対応能力を疑問視しており、底なしの危機回避には欧州の団結と強い決意を示す必要に迫られていた。

 憲法のような最上位の法規範で財政赤字に限度を設ければ、どんな政権ができたとしても、かなりの制約になる。複数の国が加盟する集団協定なので相互監視も厳しい。一国が抜け駆けして財政を拡張するのは難しくなるだろう。

 一方で、協定は景気を自動的に調節する財政政策の基本的役割を損なう懸念もある。

 税収減となる不況時には政府が赤字財政で需要を支え、逆に好況時には緊縮財政で景気を引き締める。赤字財政を禁止すれば、そんな財政の「自動安定化機能」が働かなくなってしまうのだ。

 不況時は税収減に合わせて歳出を絞らざるをえず、財政支出の拡大で景気を刺激できなくなる。逆に好況時には財政が拡張的になって、景気安定どころか好不況の波が増幅する可能性もある。

 財政政策にしばりがかかると、残された景気調節手段は金融政策だけになる。だが、こちらもユーロ導入国は欧州中央銀行(ECB)に一本化され、国ごとの景気調節には使えない。

 国際通貨基金(IMF)は欧州債務問題の深刻さを指摘する一方、急激な財政引き締めが経済を一層、悪化させる可能性についても警告を発している。

 今回の措置は、ユーロ圏全体で財政金融政策を一元化する途中経過のようにもみえる。壮大な実験だ。だが成功するかどうか、依然、危うさもつきまとっている。

 

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