国の出先機関改革が正念場を迎える。中央府省の巧みな抵抗を受けながらも決まった枠組みには、あいまいさも残る。実現なくして増税なし−との意気込みで「決断する政治」をみせてほしい。
そもそも出先機関の原則廃止は民主党が二〇〇九年衆院選のマニフェストに盛り込んだ一丁目一番地である。一〇年末に決めたアクションプランでは当初計画を一年先送りし、今の通常国会に関連法を成立させ、一四年度からの移管を目指す、とした。政府が消費税を8%に引き上げようとする時期と重なる。
昨年末に決めた枠組みは、地方移管する第一弾として地方整備局、経済産業局、地方環境事務所の三省三機関を明記。受け皿機関は地方ブロック単位でつくる広域連合とした。ここまではいい。
問題は、権限と責任を持つ広域連合の「長」だ。府省側は「知事の兼任では中立性が保てない」として、官僚を任命する腹づもりだった。知事会側の猛反発で「知事との兼任を妨げない」となったが、天下りの道は消えていない。
事務取りまとめ役として置く専任の「執行役」(仮称)にも、官僚が潜り込んでくる余地は残る。広域連合に国の関与が残れば「構成団体の事務・権限を持ち寄る」とした文言があだとなる。府県の仕事を吸い上げた出先機関の焼け太りになってしまうからだ。
府省側は、どうすれば骨抜きになるかを考えているとしか思えない。大規模災害時に広域連合を国の指揮監督下に置く案件は、決着が先送りされている。まだまだせめぎ合いは続く。くしくも野田佳彦首相が言ったように、変な地雷が入らないよう法案づくりには細心の注意を払ってほしい。
政府は三月までに人員の移管方法など細部を詰めて全体像をまとめ、五月ごろに法案を提出するという。首相は年末に「最大限の努力をする」としていたが、施政方針演説では「必要な法案を今国会に提出する」と踏み込んだ。一丁目一番地ならば、当然のことだ。
ただ、今国会は消費税増税を含む「社会保障と税の一体改革」を軸に、荒れ模様、解散含みの展開が予測される。またぞろ先送りされかねない気配も漂う。
首相は増税前に「身を切る」として、国会議員定数や国家公務員給与の削減に意欲をみせる。国家公務員約三十万人のうち、三分の二が出先機関に勤務している。地方移管でかなりの合理化が期待できる。時機を逸してはならない。
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