米国の連邦準備制度理事会(FRB)が年2%の物価上昇率をめざすインフレ目標政策の導入を決めた。日本はデフレ脱却を掲げながら、いまだ実現できていない。日銀も導入を検討すべきだ。
インフレ目標は中央銀行が長期的な物価上昇率の目標を掲げて金融政策を運営する手法だ。世界ではイギリスやニュージーランドなど多くの国で導入されている。標準的政策といってもいい。
バーナンキFRB議長はインフレ目標政策の世界的権威として広く知られており、議長就任前から導入に向けて動くとみられていた。念願を果たした形であり、同時に議長の手腕もこれまで以上に問われるだろう。
なぜインフレ目標か。議長は「金融政策の透明性を高めて、先行きの予測を立てやすくするのが目的」と語っている。企業や家計が将来の物価を予想しやすくなれば、投資や消費の判断もしやすくなる。結果として経済活動が安定する効果を見込める。
日本では「インフレ目標を導入すると、どんどんインフレが進むのではないか」とか「インフレを目標にするとは論外だ」といった誤解に基づく批判があった。
これには言葉の問題がある。インフレ目標は「インフレをめざす政策」ではなく、物価上昇率を一定に管理する目標を定めた政策である。だから「物価安定目標」と言い換えてもいい。
いまのように物価が継続的に下落するデフレ状況なら金融緩和を徹底し、逆に物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める。そういう政策運営態度を内外に事前に宣言するのだ。
日本でいえば、政策を決める日銀総裁や審議委員がだれになろうと、あらかじめ政策に枠をはめる形になるので、透明性が増し、かつ達成責任も明確になる。
インフレ目標は日本にこそ必要ではないか。長年にわたってデフレが続いているのは、主要国で日本だけだ。それは統計をみれば、はっきりしている。
とくに白川方明総裁が二〇〇八年に就任してから物価下落が加速した。経済協力開発機構(OECD)によれば、〇九年から任期が切れる一三年まで消費者物価は五年連続でマイナス予想だ。これでは物価の番人として責任を果たしたとはいえない。
デフレが終わらなければ税収は増えず、したがって財政再建も達成できない。増税論議の前に、まず日銀こそが行動すべきだ。
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