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天声人語

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2012年1月27日(金)付

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 太陽系の他の惑星で、地球人に一番なじみが深いのは火星ではないだろうか。19世紀に英国の作家H・G・ウェルズは「宇宙戦争」を書いた。地球を襲うタコのような火星人は、人類が思いめぐらす宇宙人の原型になってきた▼火星には運河があるという、まことしやかな説もあった。70年ほど前には、名優にして名監督のオーソン・ウェルズが一騒動起こした。臨時ニュースのように仕立てた「火星人襲来」のラジオドラマで、事実と思った人々がパニックになったのはよく知られる▼古来、あれこれと想像をかきたててくれた。その火星から隕石(いんせき)が飛んできたという。去年モロッコに落ちたのを国際隕石学会が調べ、そう見られると認定したそうだ▼何かの物体が火星に衝突したはずみで飛び出し、長く宇宙をさまよった末に地球に来たらしい。♪故郷(ふるさと)の星を離れて 汝(なれ)はそも空に幾歳(いくとせ)……。唱歌「椰子(やし)の実」を替えて歌う天界一人旅である▼そして、落ちたところは人の世。すでに金の価格の10倍ほどで売買されたそうだ。集められた破片は計7キロというから、単純計算すれば億の桁になる。隕石は俗塵(ぞくじん)にまみれた気分か、それとも思わぬ価値に鼻高々だろうか▼冴(さ)えわたる冬の空で、赤く光る火星が2年ぶりに地球に接近中だ。その星をめざして米の探査機が飛んでいる。月の裏に結集して侵略を目論(もくろ)む火星人はいなかったが、生命存在の可能性はあるそうだ。「好奇心(キュリオシティ)」と名づけられた探査機。さて何を見つけてくれるだろう。

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