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1月26日付 編集手帳

 馬上の織田信長が(うな)るように言う。「この国にある古いもの、ことごとくと思ったが、あれだけは壊せぬ」。徳川家康が相づちを打つ。「この日本…いかがになろうとも、あの山だけは残ります」。富士山である◆橋本忍さんのシナリオ『鉄砲とキリスト』から引いた(シナリオ作家協会編『橋本忍 人とシナリオ』より)。武将ふたりの感懐にうなずく方は多かろう◆政府は、「富士山」(山梨県、静岡県)を「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)と共に、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に推薦するという◆〈正面を探して置けと言い置いて天人去りし富士の山かな〉。詩人堀口大学が歌ったように、どこから眺めてもそこが正面になり、いつ眺めても初対面の挨拶をしたくなるような、そういう山である。古きものを忌み嫌った信長が「あれだけは…」と述べたのは、見るたびにいつも新しい姿だからかも知れない◆徳冨蘆花は『自然と人生』に書いている。〈東海の景は富士によりて生き、富士は雪によりて生く〉。新幹線の車窓から冠雪の峰を仰ぎ、はっと息をのむのもこの季節である。

2012年1月26日01時13分  読売新聞)

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