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信じられない。政権の怠慢である。福島第一原発事故に対応する政府の原子力災害対策本部が、昨年末まで計23回開いた会議の議事録をまったく作っていなかったことがわかった。[記事全文]
選挙戦の開幕を告げる演説だった。オバマ米大統領は24日の一般教書演説で、共和党との対決姿勢を鮮明にした。再選をめざす11月の投票にむけての国民への訴えだったからだ。内政[記事全文]
信じられない。政権の怠慢である。
福島第一原発事故に対応する政府の原子力災害対策本部が、昨年末まで計23回開いた会議の議事録をまったく作っていなかったことがわかった。
未曽有の危機に際し、どのような情報に基づき、どんな検討を経て、判断したのか。一連の過程を克明に記録しておくことは、振り返って事故を検証し、二度と同じ過ちを繰り返さないために欠かせない作業だ。
緊急対応に追われた事故直後だけならまだしも、昨年5月に議事録の不備が明らかになったあとも、今日まで放置してきたとは、どういうことか。
自分たちの失策が後で露見しないよう、あえて記録しなかったと勘ぐられても、申し開きできまい。
「事故の教訓を国際社会と共有したい」と、首相らが繰り返してきた言葉もむなしく響く。
実務的には、対策本部の事務局を務める経済産業省原子力安全・保安院に責任がある。しかし、記録づくりを徹底させなかった政治の側の責任はさらに重い。内閣全体の問題として、深刻に受け止めるべきである。
政府や国会の事故調査委員会による検証作業にも、大きな支障となるに違いない。今からでも出席者のメモを集めるなど、できる限り、記録の復元に努めなければならない。
原発事故の対策本部だけでなく、東日本大震災の緊急災害対策本部でも、議事録は作られていない疑いが濃厚だという。
公文書を残す意義と目的が、政府内で共有されていない実態は、ひどすぎる。
昨年4月に施行された公文書管理法は、国の活動の記録を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけ、行政機関の職員に公文書の作成を義務づけている。
政治家や官僚の誤りを、後からあげつらうのが目的ではない。将来、より適切な判断ができるよう、教訓をくみ取ることが最も重要なのだ。
野党時代、民主党は文書管理と情報公開に熱心だったはずだ。それが政権をとったら、この体たらくとは情けない。
閣僚同士の議論や政務三役会議の記録を残すことで、政治家が模範を示すべきだ。常に歴史の検証にさらされているという緊張感も生まれるだろう。
政治家や官僚の意識改革だけでなく、システムも整えよう。
たとえば、首相官邸の主な会議室には録音装置を設けて、原則、すべてのやりとりを記録しておくのが当然だ。
選挙戦の開幕を告げる演説だった。オバマ米大統領は24日の一般教書演説で、共和党との対決姿勢を鮮明にした。再選をめざす11月の投票にむけての国民への訴えだったからだ。
内政では、勤労者など中間層を重視して「誰にも公平な経済を作り直す」と述べた。勤労者への減税を拡大し、バブルの後遺症で住宅ローンに苦しむ世帯を救済するという。
大きな争点は税制である。
共和党の有力候補ロムニー前マサチューセッツ州知事が所得を公開した。一昨年は投資で2千万ドル(約15億6千万円)を超える年収を得たが、支払った税率は13.9%。給与所得ならば約35%が適用されるのに比べ、大幅に低い。
成功物語への憧れが強い米国では、富裕層の優遇も「人々の意欲を刺激する」と認められてきた。大富豪の投資家バフェット氏が「私の税率が秘書より低いのは不公平」と公言していることにふれて、オバマ氏は「最も豊かな人への減税を続けるのか。教育や医学研究にまわすのか。赤字を減らすなら、両方はできない」と迫った。
米国社会で、格差をどこまで認めるべきか。この論議は選挙を占う大きな要素だろう。
「小さな政府」を掲げる共和党は、富裕層を含めた減税やいっそうの規制緩和が必要だと主張し、オバマ政権の景気刺激策は「無駄な出費で赤字を拡大させた」と攻撃している。
気になるのは、経済ナショナリズムの高まりだ。オバマ氏は「雇用を米国に戻す」と繰り返し、国内で雇用を作り出す企業を優遇する方針を打ち出した。
そして、音楽、映画などの海賊版や「不公正な貿易」が横行していると中国の名をあげ、そういう不公正を調査する新たな組織も設けるという。
対外投資を政策で抑えることは、世界を発展させる貿易をゆがめかねない。「不公正貿易」というレッテルを貼るのも、相手国との経済摩擦を引き起こしかねないだけに、決めつけには慎重であるべきだ。
外交への言及は少なかった。
オバマ氏はイランの核兵器開発を許さないとして、「あらゆる選択肢を排除しない」と述べた。イラン攻撃を唱える共和党の主張を受けて、妥協しない姿勢を打ち出したようだ。
選挙の年は、主張が過激になりがちだ。保護主義や強硬な外交が大衆受けする。だが、そうした主張は、これまで築いてきた国際協調を弱め、米国の足元を掘り崩しかねない。冷静で実のある論争を期待したい。