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消費増税の道筋が見えてくるにつれ、逆風が強まっている。朝日新聞の世論調査でも、昨年末には増税への賛否が伯仲していたが、1月に10%への引き上げなどの具体案を聞くと、反対[記事全文]
「アラブの春」が続く中東のエジプトで、昨春の民衆革命から1年を経て、自由な選挙で選ばれた人民議会が始まった。新議会では、旧政権時代の最大野党のムスリム同胞団による自由公[記事全文]
消費増税の道筋が見えてくるにつれ、逆風が強まっている。
朝日新聞の世論調査でも、昨年末には増税への賛否が伯仲していたが、1月に10%への引き上げなどの具体案を聞くと、反対が57%に跳ね上がった。
野田首相は岡田克也副総理を改革の先頭に立てるが、前途は険しい。このまま、旗振り役を国会議員だけに任せておいてよいのだろうか。
ひとつ解せないことがある。
なぜ、知事たちは増税の必要性をもっと強調しないのか。
全国知事会は08年から、地方の財源にもなる消費税の引き上げを議論してきた。09年には、早くしないと財政が破綻(はたん)しかねないと提言もした。
いま、その実現への道筋が示されたのだから、知事たちも増税という厳しい作業の一翼を担うのは当然だろう。
さらに市町村長や地方議会議員も、負担増の必要性を説明する役割を担っているといえる。
なぜなら、今回の5%の消費増税が実現すると、そのうちの1.2%は地方消費税となる。さらに0.34%は地方財源に回る。つまり1.54%分は自治体が使うことになるからだ。
しかも、この配分を決めた昨年末の「国と地方の協議の場」には、全国市長会長や全国都道府県議会議長会の会長ら、地方6団体のトップが並んでいた。地方代表も含めて固めた増税案なのだから、実施のために汗をかくのが筋ではないか。
自治体側は今回の取り分をめぐって、政府と激しく議論をした経緯もある。
国側は当初、社会保障サービスのうち、法律で定めた自治体の負担分に見合う1.25%にすべきだと考えていた。
これに対し自治体側は、国が制度化していない自治体独自のサービスも、高齢者の福祉や保育の現場では不可欠になっているとして増額を唱えた。
配分を決めるために、私たちは「地方単独事業」を精査し、消費税収を充てるべきサービスか、自治体が別の税で賄うべきかを選別することを求めた。
だが、その作業をすることなく、大ざっぱな基準で地方の取り分を決めた。理屈に乏しい政治決着には不満が残る。
ただ、今回の協議を通じて、国と地方が力を合わせて社会保障を維持していくという認識が深まったのは前進だ。
消費増税には「社会保障に使われるよう、使い道を明確化する」という条件がついている。
その説明責任を、すべての自治体も負っていることを忘れてはいけない。
「アラブの春」が続く中東のエジプトで、昨春の民衆革命から1年を経て、自由な選挙で選ばれた人民議会が始まった。
新議会では、旧政権時代の最大野党のムスリム同胞団による自由公正党が、議席の半数近くを得て第1党になった。イスラム厳格派「光の党」が続く。両党で7割以上を占め、リベラル派や左派は後退した。
同胞団は1929年にできた穏健派イスラム組織だ。全国に草の根的な慈善組織を持ち、医師組合や技師組合など職能団体の理事会選挙を制して、運営で実績を積んできた。
経験と組織力がある同胞団が選挙で勝利することは、予想されたことだった。
革命後も、若者と治安部隊の衝突が起こり、ガソリンや燃料の不足など行政の混乱が続く。国民の間には、同胞団が政治の軸になって秩序を回復して欲しいという期待がある。
今後、憲法の起草委員会が作られ、新憲法案が国民投票にかけられる。大統領選挙の後、軍政からの民政移管となる。
選挙は革命後の緊張と混乱のなかで行われた。定数508のうち女性議員も、人口の10%を占めるコプト教徒の議員も10人ずつだけという、バランスを欠く構成になっている。リベラル派や、革命を動かした若者たちの新政党も準備不足で、支持を集めることはできなかった。
だから、議会が任命する新憲法の起草委員会には、議会の枠をこえて女性や若者、少数派など議会外からの声を反映することが必要だ。
イスラム勢力の伸長で、女性へのベールの強制や言論統制が強まることへの懸念がある。外見のイスラム化ではなく、経済政策や教育や医療、住民サービスの充実など、社会の発展を実現することでイスラム政治の有効性を示して欲しい。
逆に欧米、日本などにとってはエジプトの民主化と経済再生を支援することで、政治を主導する同胞団と建設的な関係を構築するよい機会である。
米国はすでに国務副長官や駐エジプト大使が、同胞団の団長や自由公正党党首と会談した。同胞団は対イスラエル政策では強硬派で、両国の平和条約の継続問題でかぎをにぎっていることから、米国は積極的に関与する必要性を感じているはずだ。
旧政権時代に同胞団は非合法組織だったこともあり、日本の政府も民間にも、同胞団やイスラム勢力への理解や知識の蓄積がない。理念としての「イスラム理解」ではなく、現実のイスラムへの対応が求められる。