HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 22 Jan 2012 20:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 去りゆく団塊世代:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 去りゆく団塊世代

 戦後日本の高度成長を支えてきた団塊世代が今年から順次六十五歳に達し、労働市場から多くが退場します。労働力の確保と質の向上が大きな課題です。

 悠々自適の雰囲気を漂わせる老夫婦や、現役の元気さを見せる白髪紳士が目立ちます。すでに六十五歳以上人口は約三千万人となり、総人口に占める高齢者の割合は23%を超えています。

 今年からは一九四七〜四九年生まれの団塊世代が“老人”に加わります。この世代は現在でも各年二百万人を超えており、労働市場から完全に退場すると経済・社会に大きな影響が出かねません。

◆平和憲法と貧しさと

 太平洋戦争終結後、日本でもベビーブームが起こりました。作家・堺屋太一さんは七六年、この年齢層がもたらす経済や社会への影響を描いた近未来小説「団塊の世代」を発表しました。以後、「団塊」が世間に定着しました。

 彼らが体験してきた出来事は復興から繁栄、停滞と日本の発展過程をつぶさに反映しています。

 物心が付いた五〇年代。戦争放棄と表現の自由、男女平等が明記された新憲法の下で義務教育を受けました。また映画や音楽などを通じて豊かなアメリカ社会を知り、大きな影響を受けたものです。

 青春真っ盛り六〇年代は経済の季節。所得倍増計画が始まり、六五年からは「いざなぎ景気」が五年近くも続きました。海外ではベトナム戦争が激化し中国では文化大革命が吹き荒れました。

 大学紛争はそんな状況下で起こりました。学費値上げ反対、不正経理追及など学生の反乱の理由はさまざまでしたが、行動は徐々に過激に。ゲバ棒を振るう学生らが機動隊と衝突した東大安田講堂事件は象徴的な出来事でした。

◆ゲバ棒からモーレツへ

 七〇年代に社会へ出た団塊は、「モーレツ社員」として必死に働きました。変わり身の早さが批判されましたが、経済の国際化が加速する中では自然な流れでした。

 九〇年代初めのバブル経済破裂と東西冷戦構造の崩壊は、日本だけでなく世界の転機でした。団塊世代はこうした危機的事態に直面して、政治でも経済面でも十分に対応できたとはいえない中、第二の定年退職を迎えるのです。

 二〇一〇年十月に実施された国勢調査によると、団塊世代は約六百六十三万人、総人口の約5・2%を占めています。過去の統計を基に就業者数を試算すると半数強の三百六十六万人となります。

 就業者には自営業者も含みますから、サラリーマンなど雇用者を推計してみると八割弱、二百七十万人程度。六十歳定年後も多くが嘱託や契約社員などの形で働いている姿が浮かび上がります。

 定年後の就業率が高いのは〇六年四月施行の改正高年齢者雇用安定法で企業に継続雇用が義務付けられたためで、その背景には公的年金の支給開始年齢の引き上げがある点はご承知のとおりです。

 その団塊世代が退場します。あいた穴をどう埋めるか。

 労働力人口は現在約六千六百万人。何も対策をとらなければ一千万人以上も減る見通しです。そこで政府は若者や女性、高齢者、障害者など多くの人に労働市場へ入ってもらう「全員参加型社会」の構築を提唱しています。

 たとえば若者の雇用対策では、新卒者や既卒者への就職相談を強化して就業率を高める。また職業訓練を通じて技能・技術力を高め、フリーターなど非正規雇用から正社員化を進める考えです。安定雇用で分厚い中間層を復活させるチャンスとすべきでしょう。

 女性では子ども・子育て支援を強めて、二十代後半から四十代前半にかけて就業率が低下する日本特有の極端なM字カーブの解消をはかる、というものです。

 どう具体化していくかが課題です。政府は「日本再生戦略」の策定とともに、若者雇用戦略を早くまとめる必要があります。また働きがいのある人間らしい仕事−いわゆるディーセントワークの実現も急がなければなりません。非正規雇用は雇用者全体の三分の一を超え、経済的自立が困難ですから処遇の改善が急務です。

 団塊世代は、もうお払い箱なのでしょうか。内閣府が六十歳以上の男女を対象に実施した地域社会への参加に関する意識調査では、「いつまで働きたいか」との質問に「六十五歳」が約二割、「七十歳」以上と「働けるうちはいつまでも」が七割強を占めました。

◆地域でもうひと働きを

 元気な高齢者が多いのです。地方自治体はシルバー人材センターやNPOなどを支援して、地域社会でもうひと働きする場を確保する。「老兵」は一線から退きますが、意欲のある団塊世代の活用が社会にとっても大切です。

 

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