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原発に、イエスかノーか。東京で住民投票をしよう。この署名活動が、いまひとつ盛り上がらない。呼びかけているのは、市民グループ「[記事全文]
4月から、中学1、2年の保健体育で武道とダンスが必修になる。女子も男子も、両方を学ぶ。武道はおもに柔道、剣道、相撲からの選択だが、柔道を選ぶ学校が多そうだ。心配になるデ[記事全文]
原発に、イエスかノーか。
東京で住民投票をしよう。
この署名活動が、いまひとつ盛り上がらない。
呼びかけているのは、市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」。東京電力の大株主の東京都と、関西電力株を持つ大阪市に、住民投票を実施するための条例づくりを直接請求しようという活動だ。
すでに1カ月間の署名期間を終えた大阪市では、請求に必要な「有権者の2%」を上回る、6万人あまりを集め、選管の審査を待っている。
だが、東京では期間2カ月の3分の2が過ぎても、まだ必要な21万余の半分に届かない。
この少なさは、どうしたことなのか。
署名の趣旨は「原発反対」でも「推進」でもない。
原発の是非を自分たちで決めるために、住民投票をしようというのだ。
つまり署名の数は、関心の強さをはかる物差しになる。
首都圏の電力は原発事故前、3割近くが原子力で賄われていた。その消費者の都民が、わずか2%の関心すら示せなかったら、福島県をはじめ原発の地元住民はどう思うだろう。
一方では、関心はあるのに、どこで署名できるのかがわからないという人も多いようだ。
東京の有権者は1千万人を超える。新宿駅前などに常設の署名場所があるが、隅々までは行き届かない。
しかも、署名集めを担う「受任者」は、自分の住む市区町村の有権者からしか署名を集められない。こんな地方自治法の規定も、活動の壁になっているのは確かだ。
リーダーの発信ぶりの違いも大きい。
大阪の橋下徹市長は、住民投票そのものには懐疑的だが、市長選で「脱原発依存」を掲げていた。それで関心を持った市民も多かったろう。
これに対して、東京の石原慎太郎都知事は「エネルギーをどうやって補給するかの設計図もない時点で、センチメンタルともヒステリックとも思える」と突き放すだけだ。
だが、住民投票こそが、この「設計図」を市民がみずからの問題としてとらえ、考えていくきっかけになるはずだ。
原発の行く末をみんなで考える。そのための住民投票をするには、もっと署名が要る。
大震災を機に、エネルギー政策が根幹から問い直されているいまこそ、都民は消費者としてもの申そう。そのために、首都で住民投票を実現させよう。
4月から、中学1、2年の保健体育で武道とダンスが必修になる。女子も男子も、両方を学ぶ。武道はおもに柔道、剣道、相撲からの選択だが、柔道を選ぶ学校が多そうだ。
心配になるデータがある。
名古屋大の内田良・准教授の調べによると、中学、高校の柔道事故で死亡した生徒は2010年度までの28年間で114人もいる。年平均で、4人の若い命が失われている。
スポーツのなかでも、柔道はほかの競技に比べて危険度が高い。09年までの10年間、中学校の部活動ごとの事故死亡率(10万人あたりの死亡生徒数)で、柔道は2.376と飛び抜けて高かった。次に高いのはバスケットボールの0.371だ。
横浜市で8年前、中学校に通う男子生徒が柔道部での顧問教諭との乱取り中に意識を失い、脳に障害が残った。両親らがおこした裁判の判決が昨年暮れにあり、市と神奈川県に約8900万円の支払いを命じた。事故はいまも学校で絶えない。
08年に武道の必修化がきまったとき、学校での柔道の事故を何年もの記録で分析した資料はなく、危険性は広く認知されていなかった。
中学と高校で、後遺症が残る柔道事故は09年度までの27年間で275件あった。うち3割は授業中だ。中学、高校ともに死亡事故の5割以上は1年生で、初心者が多い。
多発を受け、文部科学省は全国の教育委員会などに安全に気を配るよう通知した。指導者研修も開いているが、数日間で技能を身につけるのは難しい。
全日本柔道連盟も研修会を開き、13年度からは指導者資格制度を始める。ただし、中学校の先生にこの資格の取得が義務づけられるわけではない。
柔道人口が日本の3倍の60万人といわれるフランスでは、死亡事故は考えられないという。指導には国家資格が必要で、安全への考えが共有されている。文化として柔道を重んじ、礼儀作法を身につけることも大切にしている。本家である日本が習うべきものは多い。
全国に中学校は1万校あり、新年度の1、2年生は240万人いる。運動が苦手な生徒もいる。そして、授業する教員は、必ずしも柔道の専門家というわけではない。
教育の場からも、柔道界からも「初心者が初心者を教える」ことへの不安の声がある。
「スポーツにけがはつきもの」という言い訳は通じない。安全対策が不十分なら、必修化の実施は先送りすべきだ。