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1月21日付 編集手帳

 「胃」を漢和辞典で引くと、古訓(古い読み方)が載っていた。〈クソフクロ〉。言わんとするところは察しがつくが、心配ごとや緊張感でシクシク痛む繊細な器官に、やや気の毒な呼び名ではある◆胃を酷使する仕事は数あるなかで、「船長」はおそらく五本の指に入るだろう。〈胃潰瘍にならないと一人前じゃない、といわれるくらいで…〉。四半世紀にわたって外洋客船の船長を務めた弓場(ゆば)通義(みちよし)さんの言葉である(小学館『千年語録』より)◆〈船長には「最後退船の責務」がありましてね。万が一の場合、まずお客さまを逃がし、次に乗組員を逃がし、船長は一番最後に船を去る〉◆イタリア沖で座礁した大型クルーズ船の船長のような人もいるから、世間は広いものである。乗客を助ける前に自分が逃げた。釈明がいい。「座礁した船の上で転び、偶然、救命ボートの中に落ちた」。古訓の似合う丈夫な胃袋をお持ちに違いない◆行き詰まったプロジェクト(しか)り、傾きかけた会社また然り…思えば、「最後退船の責務」は陸の世界にもある。肩書に「長」の字を持つ人には、他山ならぬ“他海の石”だろう。

2012年1月21日01時10分  読売新聞)

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