横浜市で開かれた「脱原発世界会議」は、海外の国会議員も参加する大きなシンポジウムから、市民団体が企画した小さな集まりまで、数え切れないほどのイベントで盛況だった▼いくつかの会場をのぞいてみた。内部被ばくに関して医師や専門家が答える質問会には、健康被害を心配する人たちから切実な質問が飛んでいた。印象に残ったのは、ビキニでの水爆実験で被ばくした第五福竜丸の乗組員だった大石又七さんの話だ▼当時、日本政府は米国に賠償を求めなかった。政治決着の裏で、平和利用の名目で導入されたのが原発だった。核実験に協力する代わりに原子炉を早急に送ってほしい、と政府が輸入を求めた経緯を「押さえ(理解し)てほしい」と訴える声には気迫がこもっていた▼会議には約一万千五百人が参加、インターネットで全世界に中継され約十万人が視聴したという。企画に参加した十五歳のアイドル藤波心さんは、ツイッターで辛口のコメントをつぶやいている▼「日本の未来、ヒトの命がかかっている問題に、2日で来場者1万2千人というのは少なすぎると思う。アニメや同人誌のコミケでも数十万人来る。脱原発は決して内輪で満足する仲良しクラブになってはいけないと思う」▼早くも事故を忘れかけている人たちがいる。「収束宣言」を急ぎ、風化させたい原子力ムラの思うつぼである。