HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 48467 Content-Type: text/html ETag: "f2dd8-12c0-4b6cfda500330" Expires: Thu, 19 Jan 2012 00:22:20 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 19 Jan 2012 00:22:20 GMT Connection: close 1月19日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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1月19日付 編集手帳

 画家の安野光雅さんに故郷・津和野(島根県)をうたった詩がある。〈夢に津和野を思ほえば/見よ城跡(しろあと)へうすけむり/泣く子寝入るや(さぎ)舞ふ日/遠雷それて風立ちぬ〉◆エッセイスト関容子さんの対談集『再会の手帖』(幻戯書房)から引いた。詩の題名は『つわのいろは』、新いろは歌である。重複なしに仮名をすべて使い、意味と調べをもった歌にする。本来の〈色は匂へど散りぬるを〉といい、いつの世にも言葉の魔法使いはいるものである◆「ぬるをわか」「つねなら」――三重県明和町の斎宮(さいぐう)跡から、いろは歌の書かれた平安時代後期の土器が見つかった。ひらがな表記のいろは歌としては国内最古の確認例という◆女官が文字を覚えるために書いたらしい。達人が作った歌で手習いをした人のなかから、いつかまた新しい達人が生まれる。文化とはそういうものだろう◆文芸評論家の山本健吉さんは、ある冬、友人に手紙を書いた。季節が終わらぬうちに鍋を囲もうか、という心を1行に託している。〈タラちり フグちり ちりぬるを〉。出土の記念に今夜は“ちり”でも…と、独りつぶやいてみる。

2012年1月19日01時22分  読売新聞)

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