民主党が衆院定数を小選挙区で五、比例代表で八〇削減する案を決めた。「一票の格差」是正は当然だが、小政党を切り捨てる比例削減よりも議員歳費と政党交付金の減額を優先させるべきだ。
まず、二〇〇九年の前回衆院選で小選挙区の「一票の格差」が二倍を超え、最高裁が違憲状態と指摘したため、格差是正が喫緊の課題になっている。
加えて、消費税率引き上げへの国民の理解を得るため、国会議員自らが身を切る姿勢を示そうというものだ。
定数を含めて衆院の選挙制度をどう見直すかは本来、国会全体の選挙制度改革で決めるべきだ。
しかし、望ましい選挙制度は各党間の隔たりが大きい。これから議論を始めたのでは次の選挙に間に合わない事情も理解できる。
一票の格差是正を優先し、現在三選挙区ある福井など五県で二選挙区に減らすのは、緊急避難的な措置としてはやむを得まい。
ただ、それに加えて比例を八〇削減するというのは拙速だ。
小選挙区に比べて比例代表は、いわゆる「死票」が少なく、幅広い民意を議席に反映できる。比例定数を減らせば小政党は切り捨てられ、大政党に有利となる。
〇九年衆院選の得票に基づく本紙試算でも比例八〇削減の場合、民主、自民はそれぞれ38%、43%の減にとどまるが、公明50%、共産55%、みんなの党60%と半減以上。前回四議席の社民、一議席の新党大地(当時)はゼロとなる。
野党各党が比例削減に反対するのは当然だ。比例からの削減は見送り、必要なら小選挙区の削減数を増やすか、抜本的な選挙制度改革の中で議論すべきではないか。
国会議員自らが身を切るというのなら、議員歳費や、約三百二十億円を共産党以外の政党が山分けしている政党交付金(助成金)の減額を優先させてはどうだろう。
岡田克也副総理は議員歳費について「公務員(の給与削減)が8%というときは、国会議員はそれ以上の歳費削減をやるべきだ」、政党交付金の削減についても「検討課題だ。私はすべきだと思う」と述べた。
しかし、民主党の輿石東幹事長は歳費削減を「今すぐ議論する必要はない」と否定的で、交付金削減は検討しようとすらしない。
国民に痛みを強いようというときに、あまりにも後ろ向きではないか。これでは身を削る覚悟を疑われても仕方があるまい。
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