HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 33594 Content-Type: text/html ETag: "127e2b-5f0a-d7557f40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 19 Jan 2012 01:21:07 GMT Date: Thu, 19 Jan 2012 01:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
来週から通常国会が始まる。消費増税と社会保障の一体改革など、重要な政策課題が待ち構えている。なんとしても、結論を出す国会審議を求める。振り返れば、[記事全文]
原発の寿命を40年と法律に明記する方針を細野原発相が発表して2週間もたたないうちに、例外的に最長60年まで延長可能とする法改正案を内閣官房が明らかにした。一方、経済産業[記事全文]
来週から通常国会が始まる。
消費増税と社会保障の一体改革など、重要な政策課題が待ち構えている。なんとしても、結論を出す国会審議を求める。
振り返れば、昨年は衆参で多数派が異なる「ねじれ」のもと、法案審議の停滞が目に余った。東日本大震災からの復旧、復興を除けば、与野党が角突き合わせるばかりで、政治不信をいっそう募らせた。
赤字国債発行法案の扱いが象徴的だった。野党が衆院解散・総選挙に追い込むための「人質」にとったため、成立はなんと8月末までずれこんだ。
こんな駆け引き優先の国会を繰り返す余裕は、もうない。
いまこそ、与野党が真剣に議論して合意点を見いだす国会に進化しなければならない。
そのために、ひとつ提案がある。
野田首相の施政方針演説のあと、各党の代表質問に代えて、首相と全野党の党首による党首討論をしよう。
代表質問は、聞く方も答える方も原稿の棒読みが多く、議論もなかなかかみ合わない。
ほとんど、開会の儀式にすぎないではないか。
かつて、自民党の長期政権時代は、いくら野党が反対しても法案は成立したから、こんな手法もまかり通った。
しかし、政権交代の時代、ましてや、ねじれ国会が常態化するいま、与野党は新たな役割を担っている。
野党は「反対」を叫ぶだけでなく、きちんと対案、修正案を示す責任を負う。政府与党はそれに柔軟に応じていく。そんな緊張関係が求められている。
ならばこそ、国会の冒頭から党首討論をやって、野党各党も主要な政策課題に対する基本方針を明らかにすべきだ。首相がどう答えるかで、国会論戦の方向性はおのずと定まる。
過去に新進党や民主党の代表が、政権奪取を想定して野党版の所信表明をして、首相に「答弁」ではなく「意見」を求めたことがあった。それよりも、党首討論の方がさらに議論の中身を深められる。
自民党は一体改革の与野党協議を拒み、国会の特別委員会での論戦を挑む構えだ。
その場合も、野党が政府をただすだけでなく、委員同士の自由討議を認め、妥協点を探るための工夫をこらそう。
長年続いてきた代表質問は、法律で決められた手続きではなく、慣例に過ぎない。
まず党首討論で与野党が相まみえる。それが国会を真の討論の場に変える第一歩になる。
原発の寿命を40年と法律に明記する方針を細野原発相が発表して2週間もたたないうちに、例外的に最長60年まで延長可能とする法改正案を内閣官房が明らかにした。
一方、経済産業省の原子力安全・保安院は、関西電力が実施した大飯3、4号機(福井県)についてのストレステスト(耐性評価)を「妥当」とする審査結果の素案をまとめた。定期検査で止まった原発の再稼働に向けた一歩となる。
国民の多くは戸惑っているのではないか。原発への依存度を減らしていくのが野田政権の原点だったはずだ。「40年まで」は野田首相が政権発足時に明言した「寿命が来た原発は順次廃炉にする」という方針の具体化ではなかったのか、と。
原発の40年以上の運転について、内閣官房は「極めて例外的で、これまで以上に厳しい基準を設ける」と説明する。ストレステストも「手続きの一環で、再稼働の是非は政治に委ねられている」(保安院)という。
だが、震災を教訓に規制を強化し、原発を減らしていくという姿勢が後退した印象を与えているのは間違いない。
そもそも、原発をどのくらいかけて、どの程度減らすかという大枠が決まらないうちに、細かい規制や手続きを進めようとすることに無理がある。
エネルギー政策全体については「2030年に電力供給の53%を原発でまかなう」とするエネルギー基本計画を白紙から見直すことになっている。舞台は経産省が事務局の総合資源エネルギー調査会。今春がめどだ。
しかし、原発をめぐる意見の対立が激しく、委員からは「合意点と対立点の整理にとどめ、最終判断は政治に委ねるほうがいい」との声が出ている。
野田内閣は、有識者らの審議を待つだけでなく、リーダーシップを発揮する必要がある。
大切なのは、政権の姿勢が揺らいでみえることのないよう、折に触れてメッセージを発していくことだ。
古い原発は出力も小さく、需給に与える影響は大きくない。すでに40年を過ぎた原発は確実に止めることを宣言する。
そのうえで、昨夏の節電効果も踏まえて、今夏のピーク時に最低限動かさざるをえない原発が何基なのか、具体的に示すことが欠かせない。
閉められる原発はできるだけ早く廃炉にしていく。そのための環境整備を急ぐ。こうした姿勢を目に見える形で示さなければ、今後の原発政策に対する理解も得られまい。