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2012年1月18日(水)付

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電気値上げ―脱・東電依存の契機に

東京電力が、4月から企業向けの電気料金を値上げすると発表した。福島第一原発の事故で、原発による電力供給が減り、火力発電で補った結果、燃料費の負担が大きく増えたためだ。[記事全文]

君が代判決―行き過ぎ処分に歯止め

卒業式や入学式のシーズンを前に、最高裁から注目すべき判決が言い渡された。「式では日の丸に向かって立ち、君が代を歌うように」。そんな校長命令に従わなかった東京都の教職員へ[記事全文]

電気値上げ―脱・東電依存の契機に

 東京電力が、4月から企業向けの電気料金を値上げすると発表した。

 福島第一原発の事故で、原発による電力供給が減り、火力発電で補った結果、燃料費の負担が大きく増えたためだ。

 対象は、百貨店や工場、オフィスなど料金が自由化されている50キロワット以上の契約を結んでいる事業所だ。東電にとって電力販売量の約6割、売り上げのほぼ半分を占める。

 1キロワット時あたり2円60銭前後が、今の料金に上乗せされる。平均で17%の引き上げとなる。東電は8千億円以上に膨らんだ燃料費増の半分程度を、この値上げで相殺する。

 東電は、原発事故の処理や賠償、廃炉にかかる費用など巨額の負債を抱える。リストラを徹底させるのは当然だが、それでも自力での再建は無理だ。

 資金繰りがおかしくなれば、首都圏の電力供給にも影響しかねない。このため、政府は賠償の支援だけでなく、東電に資本も注入し、一時国有化する方針だ。値上げしなければ、そのぶん税金の投入額が増えることになりかねない。

 であれば、その前に東電の電気を使ってきた利用者がまず負担するのはやむを得ない。

 しかし、電気料金がかさむことは、円高や需要減で厳しい経営環境に見舞われている経済界にとっては、新たな痛手だ。

 何より、東電以外の電気を使う選択肢が極めて限られていることが、影響をより深刻にしている。

 90年代半ばからの規制緩和によって、制度上は発電部門や小売り部門で自由化の範囲が広がった。だが、現実にはほとんど競争は生じず、小売市場に占める新規事業者のシェアは2%未満にすぎない。

 送電網を電力大手が握り、新規参入に不利な条件を設定してきたことが大きな要因だ。

 電力の多様化につながるよう公平な競争環境を整え、電力ビジネスの活性化を急がなければならない。そのためには、送電部門を発電部門から切り離す発送電分離を、着実に進める必要がある。

 自由化が形だけにとどまった背景には、経済界自身が電力大手との関係悪化をおもんぱかって自制してきた面もある。

 値上げを機に、東電より安い電力を供給する事業者との契約に切り替えたいと考える企業も増えるだろう。新規事業者にとっては好機だ。

 苦境を改革につなげる「脱・東電依存」を、経済界は率先して進めてもらいたい。

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君が代判決―行き過ぎ処分に歯止め

 卒業式や入学式のシーズンを前に、最高裁から注目すべき判決が言い渡された。

 「式では日の丸に向かって立ち、君が代を歌うように」。そんな校長命令に従わなかった東京都の教職員への処分が、妥当かどうかが争われた裁判だ。

 結論はこうだった。

 規律や秩序を保つために、戒告処分はやむをえない。それをこえて減給や停職とするには、慎重な考慮が必要だ。式典を妨害したなどの事情がないのに、命令違反をくり返したというだけで、こうした重い処分を科すのは違法である――。

 日の丸・君が代は戦前の軍国主義と深い関係があり、その評価は一人ひとりの歴史観や世界観に結びつく。

 最高裁は、昨年の判決で「起立や斉唱を命じても、憲法が保障する思想・良心の自由に反しないが、間接的な制約となる面がある」と述べ、学校側に抑制的な対応を求めた。今回の判決はその延長線上にある。

 私たちは、日の丸を掲げ、君が代を歌うことに反対しない。だが処分してまで強制するのは行きすぎだと唱えてきた。

 その意味で、戒告が認められたことへの疑問は残るが、最高裁が減給・停職という重大な不利益処分に歯止めをかけたことは、大きな意義がある。

 教育行政にかかわる人、なかでも橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会のメンバーは、判決をじっくり読んでほしい。

 維新の会は大阪府と大阪市で「命令に2度違反で停職」「研修を受けたうえで3度目の違反をしたら免職」という条例の制定を打ち出していた。

 違反に至った背景や個別の事情には目を向けず、機械的に処分を重くしていくもので、今回の判決の趣旨に照らして違法になるのは明らかだ。

 さすがに橋下市長と松井一郎知事は見直す考えを示した。だがそれは、停職処分とする前にも研修の機会を設けるという案で、問題の本質を理解した対応とはとても言えない。

 選挙で圧勝した2人には、民意の支持という自信があるのだろう。もちろん民意は大切だ。

 しかし、精神の自由に関する問題を、多数派の意向や思惑で押しきってはならない。それは歴史の教訓であり、近代民主主義を支える精神である。

 自分とは異なる意見の存在を受け止め、心の内にはむやみに踏み込まない。そうした寛容な土壌のうえに、しなやかで、実は力強い社会が生まれる。

 判決の根底に流れるこの考えをしっかりと受け止めたい。

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