医療や介護サービスの価格である診療報酬と介護報酬が、二〇一二年度から引き上げられる。医療機関や介護事業者の単なる収入増に終わらせず、医療と介護の質向上につなげる必要がある。
診療報酬は、医療保険を使って診察や検査を受けたり薬をもらったりした際に、医療機関に払う治療・投薬代の価格を定めている。
介護報酬も事業者の介護サービスの価格を決めている。
改定は医療・介護に使う費用の総枠を決めるものだ。診療報酬は二年ごと、介護報酬は三年ごとに改定され、今回は六年に一度の同時改定になる。
診療報酬は全体で0・004%のアップだ。国民が使う医療費は年間約四十兆円だから総枠は約十六億円の増額になる。引き下げを求めた財務省や据え置きなどを求めた政策仕分けと、引き上げを求めた民主党の三方に厚生労働省が配慮した政治決着といえる。
医療費は保険料が約五割、国の公費が約四割、残りを窓口で患者が払っている。わずかでも増額改定で国民の負担が増える。
今回の改定では、医薬品の実勢価格の低下を受けて薬代を下げ、その分の約五千五百億円を医師の手術などの技術料に回す。薬代は下がるが、診察料は上がる。
デフレ下で給与が下がっているときだ。医療機関への報酬を減らさないのなら、どのような診療や医療機関の取り組みに報酬を配分するのかが重要になる。その議論が厚労省で始まった。
十年ぶりのプラス改定となった前回は、医師不足が深刻化する救急医療や産科、小児科などの分野に手厚く配分した。引き続き働く人の負担軽減や処遇の改善に努めるべきだ。
病があっても自宅で生活したいとのニーズは高まっている。そのための医療と介護の連携も大切である。退院後も訪問看護など必要な医療で健康を支え、同時に介護ケアで日常生活を支えられるサービスを強化する必要がある。
介護報酬は全体で1・2%の引き上げを決めた。低賃金が問題となっている介護職員の処遇改善に、一一年度まで交付金という形で賃金の増額分の財源を確保してきた。一二年度からはそれをやめ、介護報酬を引き上げて増額分に充てる。
介護を現場で支える人材の処遇は交付金という一時的な措置ではなく、介護保険で賄うべきものだ。介護職員が長く働けるよう確実に賃金に反映させるべきだ。
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