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2012年1月17日(火)付

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ユーロ危機―格下げに負けぬ結束を

フランスなど欧州9カ国の格付けを米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が一斉に引き下げた。ギリシャの債務減免をめぐる同国政府と金融機関との交渉は、減免率での対立から中断した。[記事全文]

センター試験―複雑さ、もう限界だ

大学入試センター試験で大きなトラブルがおきた。2冊配るべき問題冊子を、1冊しか配らない。そういった試験監督者の不手際が、全体の8%にあたる58会場であり、約4500人が[記事全文]

ユーロ危機―格下げに負けぬ結束を

 フランスなど欧州9カ国の格付けを米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が一斉に引き下げた。ギリシャの債務減免をめぐる同国政府と金融機関との交渉は、減免率での対立から中断した。

 債務問題への対応の遅れが、経済環境をさらに悪化させる負の連鎖が生じている。次々と迫る難題に、外国為替市場ではユーロ安が一段と進む。

 ここで何より心配なのは、危機対策の柱である欧州金融安定化基金(EFSF)の土台が動揺することだ。

 財政危機の国や経営難の銀行を支援するEFSFは、最上位格付けの「AAA」を持つ独仏など6カ国の信用で資金を調達してきた。資金量のうえでドイツに次ぐ担い手であるフランスが一段階下の「AA+」に陥落した痛手は大きい。

 ただ、格下げは今後も起こりうる。当面は、金利が割高になっても「AA+」格の国の信用も使って資金を確保しつつ、金利コストの上昇分が支援国の負担増にならないよう、工夫していくほかない。

 同時に、さらに踏み込んだ枠組みが必要だ。格下げで個々の国の信用低下が避けがたいのならば、これをはね返すために、欧州全体として信用力を高める取り組みが求められる。

 具体的には、金融市場で期待が強い「ユーロ圏共同債」での資金調達である。各国がばらばらに国債を出すより、借金の条件は全体として有利になるはずだ。負担が増えるドイツが抵抗しているが、いまこそユーロ圏の結束を固め直し、危機克服への覚悟を行動で示す時だ。

 今年7月に設立する欧州版の国際通貨基金(IMF)といわれる欧州安定メカニズム(ESM)の強化がその露払いとなるだろう。今はEFSFとESMを合わせた資金規模に、5千億ユーロ(約49兆円)の上限規定がある。抜本的な拡大に踏み切るべきだ。

 このまま個々の国の信用に頼り続けると、信用力格差から利害の対立が鮮明になり、ユーロの分裂や崩壊というシナリオが現実味を帯びる。

 仮に、金融市場がギリシャの離脱やユーロの分裂を真に受け始めると、資産保全や投機的な思惑による巨大な資金シフトが起き、銀行システムを危機に陥れる恐れがある。そうなれば、健全な国の経済までもが大打撃を受けることになる。

 このような制御不能の事態を防ぐために、欧州は団結して問題解決への姿勢を示し、思惑の芽を摘まなければならない。

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センター試験―複雑さ、もう限界だ

 大学入試センター試験で大きなトラブルがおきた。

 2冊配るべき問題冊子を、1冊しか配らない。そういった試験監督者の不手際が、全体の8%にあたる58会場であり、約4500人が迷惑をこうむった。

 混乱したのは、地理歴史と公民の試験だ。今回からこんな仕組みに変わった。

 2科目受ける受験生は、たとえば地理と日本史のように地歴から2科目選んでもよいし、地歴と公民から1科目ずつ選んでもよい。その2科目をまとめてひとつの時間帯で試験する。解く順番は自由だが、先に解いた科目の得点だけを使う大学もある。だから問題を2冊同時に渡す必要がある受験生がいる。

 1回聞いただけでは、のみこめない複雑さだ。それが混乱を招いた。周知期間も半年では短すぎた。

 なぜ、こういう仕組みになったのか。今の学生は地理や歴史の素養が足りない。たとえば世界史と日本史を両方学ぶ子が増えるよう、科目選択の幅を広げてほしい。そんな大学側の要請にこたえたのだ。

 背景にあるのは、大学全入時代をむかえて、大学や受験生が多様化したことだ。

 1990年に148大学の参加で始まったセンター試験は、今や835大学・短大と5倍以上にふくれあがった。大学進学率も5割を超えた。

 どの科目を勉強してきた、どの程度の学力がある学生をとりたいか。大学によって要請はまちまちだ。そのすべてに一つの試験でこたえようとすれば、おのずと仕組みは複雑になる。

 今回の失策だけなら、2冊に分かれた問題冊子を1冊にまとめれば再発は防げる。でも、それだけでいいだろうか。

 制度の変更にトラブルはつきものだ。英語のリスニングが始まった6年前も、機器の不具合が相次いだ。当面はこれ以上仕組みをいじらず、定着を図るべきだ。

 試験監督でさえ間違えるのだから、ころころルールが変わったのでは、受験生はおちおち勉強に打ち込めない。

 そのうえで、もっとシンプルな制度への改革を、10年単位で議論してはどうか。

 センター試験を複数回に増やす案も、かつて大学審議会などで出た。一回だけの機会に比べて、受験生の重圧を減らせる。運営側の失敗で不公平が生まれたときに取り返しをしやすくするためにも、もう一度真剣に検討したい。

 もちろん、変えるときは十分な予習時間をとろう。

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