HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49046 Content-Type: text/html ETag: "33ac0-139a-4b6574951740b" Expires: Fri, 13 Jan 2012 00:21:46 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 13 Jan 2012 00:21:46 GMT Connection: close 1月13日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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1月13日付 編集手帳

 回らぬ舌で一生懸命にお話をしたのだろう。モミジのような手を合わせた姿が目に浮かぶ。〈仏壇へアリガトマシタ彼岸の子〉。「読売俳壇」の選者、俳人の矢島(なぎさ)()さんに先日いただいた句集『野菊のうた』(ふらんす堂)より◆春と秋のお彼岸でなじみの深い「彼岸」には、向こう岸、転じて“あの世”の意味もある。対する“この世”を「此岸(しがん)」という。川であれ、また海であれ、岸という場所には、生者に死者を(しの)ばせる何かがあるらしい◆1年前、お題が「岸」と発表されたときは、これほど憂いの深い陰翳(いんえい)をもったお題になるとは知らなかった◆きのう歌会始の儀で朗読された歌には、震災に関連した「岸」が幾つかある。直接は触れていない歌のなかにも、生と死を、別離を、読み取った人は多かろう。選者の歌人、永田和宏さんは詠んでいる。〈(もや)ひ解けて静かに岸を離れゆく舟あり人に恋ひつつあれば〉。一首一首、すべてが挽歌(ばんか)のように聞こえる、こういう歌会始は記憶にない◆親を亡くした子供たちが「アリガトマシタ」と手を合わせることのできる明日でありますように。向こう岸に祈る。

2012年1月13日01時31分  読売新聞)

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