民主党元代表小沢一郎被告が法廷で「政治団体の仕事はすべて秘書任せ」と述べた。無罪をあらためて強調したわけだ。問題の四億円について納得いく説明こそ、政治家の信用回復の鍵となろう。
初公判から約三カ月間に、検察の捜査に疑問符が付いた。一つは事実と異なる捜査報告書の問題だ。「(元秘書の石川知裕衆院議員が)議員なのにウソを言ってはいけないと言われた。あれが効きました」と書かれている。作成した検事は法廷で「その通りのやりとりはなかった」「記憶が混同した」と答えた。
問題なのは、この報告書が小沢元代表が陸山会事件に関与したとする石川議員の供述調書の裏付けとなっていることだ。市民による検察審査会が強制起訴に持ち込む根拠となった可能性がある。
もう一つは、捜査に加わった大阪地検元検事の証言だ。建設業者の取り調べメモでは、一億円を渡したとする水谷建設以外は「小沢元代表側に現金を渡していない」という業者ばかりだったと述べた。「渡していない業者」のメモは検察審のメンバーには明らかにされていない。つまり、検察があえて、検察審に起訴議決を促そうとする、きわどい手法をとったとの見方も浮上するのだ。
もともと小沢元代表は「国家権力の乱用だ」と訴えていたが、陸山会事件そのものが、はじめに「筋書きありき」の捜査ではなかったかという想像すら湧く。
石川議員ら元秘書三人に対する判決では、土地取引の原資となった四億円を隠蔽(いんぺい)しようとしたと推認し、三人が共謀したことも推認するなど、推測を重ねて有罪に導いたとも批判されている。
小沢元代表の裁判では、裁判官は一切の予断を排し、厳格な事実認定に基づいて、四月に予想される判決に臨むべきだ。
小沢元代表もさらに説明を尽くさねばならない。四億円の問題は政治資金収支報告書の虚偽記載の動機に直結するポイントだ。
その説明が政治資金から銀行融資、個人資産などと変わった。どれが正しい答えなのか、なぜ変遷するのか。国民が納得しないのは、小沢元代表の姿勢にも原因がある。
陸山会事件後は沈黙状態にあった小沢元代表は、現政権を強く批判し、自らの派閥を糾合し「動く小沢」に変わってきた。政治活動に信頼回復を目指すなら、それを支える政治資金の明朗化こそ、越えるべきハードルである。
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