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2012年1月12日(木)付

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米大統領選―「強い米国」に代わる道

オバマ氏が再選を果たすかどうか。11月に行われる米国の大統領選挙は、今年相次ぐ世界の主要国の選挙の中で、最大の焦点だろう。政権奪取をめざす野党・共和党の候補者選びが、熱[記事全文]

JR前社長無罪―なお重い安全への責任

鉄道事業者に要求される安全対策という点から見れば、(略)期待される水準に及ばないところがあった――。乗客106人が亡くなった7年前のJR宝塚線脱線事故で、神戸地裁は業務[記事全文]

米大統領選―「強い米国」に代わる道

 オバマ氏が再選を果たすかどうか。11月に行われる米国の大統領選挙は、今年相次ぐ世界の主要国の選挙の中で、最大の焦点だろう。

 政権奪取をめざす野党・共和党の候補者選びが、熱を帯びてきた。

 高止まりした失業率。膨張する財政赤字。そして「超大国」としての威信の低下。米国が直面する現状は深刻である。

 不況の出口が見えないことから、オバマ氏の支持率は低迷している。「チェンジ(変革)」を掲げて若者たちを駆り立てた熱気は、消えて久しい。経済情勢が好転しない限り、再選には黄信号が点滅している、と言っていいだろう。

 一昨年の中間選挙で下院を制した共和党は、勢いに乗って、「打倒オバマ」に燃えている。

 緒戦で頭ひとつ抜け出たのはロムニー前マサチューセッツ州知事だ。最初の予備選だったアイオワ州に続き、ニューハンプシャー州で勝利した。

 とはいえ、全米各州で行われる長いレースの序の口である。団子状態の予備選を見ていると、内輪の足の引っ張り合いが続いている。

 穏健派で、キリスト教の中で異端視されるモルモン教徒のロムニー氏では党は燃えないと、対抗馬を探しているのが「茶会」グループだ。一方、徹底して「小さな政府」を求めるリバタリアン(自由至上主義者)のポール下院議員は、海外への介入反対などを訴え、若者や無党派層の支持を集めている。

 この三つどもえの構図を見極めるには、まだ時間がかかりそうだ。

 オバマ陣営も、4年前とは様変わりの選挙戦を覚悟しなければならない。1期目は「ブッシュ政治の後始末」に追われたと言えなくもないだろう。だが、足元の議会との関係を改善しない限り、どんな理想も空回りすることを痛感したはずだ。2期目に向けて、どんな新たなビジョンを示すのか。

 米国民も、対テロ戦争の終結にめどを立てた点は評価しているようだ。だが「超大国」の地位を滑り落ちることには大きな不安を感じている。「茶会」も、ウォールストリート占拠運動も、その背景に現状への不満がある点で同根といえよう。

 史上初のアフリカ系大統領を誕生させた前回に比べて、重苦しい選挙である。中国など新興国の台頭で世界も多極化して、超大国も相互依存ネットワークから抜け出せない時代だ。

 「強い米国」に代わる新たな米国の姿を論じて欲しい。

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JR前社長無罪―なお重い安全への責任

 鉄道事業者に要求される安全対策という点から見れば、(略)期待される水準に及ばないところがあった――。

 乗客106人が亡くなった7年前のJR宝塚線脱線事故で、神戸地裁は業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫前社長に無罪を言い渡した。その際の裁判所の指摘である。

 判決は、組織としての責務が個人の刑事責任につながるわけではないとしたうえで、前社長は危険を予見することができなかったと結論づけた。

 過失事件の刑事裁判は、企業の責任を問う仕組みになっていない。裁判所は、その限界を示しつつも、事故防止をめぐるJR西日本の姿勢に厳しく注文をつけた、と読める。

 事故の直接原因は、列車が制限速度を超えて急カーブに突っ込んだことだ。運転士は死亡し、前社長が起訴された。鉄道事故で経営幹部の刑事責任が問われた異例の裁判だった。

 自動列車停止装置(ATS)を設置していれば事故は防げた。現場は96年に半径がほぼ半分となる急カーブに変更され、通過する列車の本数も増えた。

 検察は、危険性が高まったのにATSを整備しなかったのは、当時、安全対策を統括する取締役鉄道本部長だった前社長の過失だと主張した。

 運転士にミスがあれば、いつか事故が起きるかもしれない。そうした程度の認識で過失を問えると責任の範囲を広げ、起訴に持ち込んだ。

 しかし判決は次のように判断して前社長の責任を否定した。

 鉄道事業者は当時、カーブの危険度を個別に判定してATSを整備していたわけではない。現場のような急カーブはほかにもあり、脱線の危険性の認識につながるものではなかった。

 具体的な危険性が予想できなければ有罪にできないという従来の考え方に沿った判断だ。

 この裁判では被害者参加制度によって経営陣の供述調書が開示されたり、遺族が前社長に直接質問したりする機会があった。それでも遺族らは結論に満足していないだろう。

 事故の誘因として運転士らへの懲罰的な日勤教育が指摘され、安全への投資より収益を重視する同社の企業体質に不信が強かったからだ。

 実際に、原因究明にあたる国の事故調査委員会の委員らに不明朗な工作を重ねていた。内部資料を兵庫県警に提出せず、証拠隠しの疑いも持たれていた。

 JR西日本は無罪を免罪符と受け止めるのではなく、安全思想を徹底させる必要がある。

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