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2012年1月11日(水)付

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一体改革協議―捨て身で野党呼び込め

野田首相が週内に、内閣改造と民主党役員人事に踏み切る。昨年、参院で問責決議を受けた一川保夫防衛相と山岡賢次消費者相を交代させるとともに、税と社会保障の一体改革を進める態[記事全文]

沖縄の発展―南国の力いかす産業を

沖縄は今年5月に、日本復帰から40周年の節目を迎える。復帰後の沖縄は、基地、公共事業、観光の「3K依存経済」と呼ばれ、ものづくりは弱かった。広大な米軍基地とそれに伴う事[記事全文]

一体改革協議―捨て身で野党呼び込め

 野田首相が週内に、内閣改造と民主党役員人事に踏み切る。

 昨年、参院で問責決議を受けた一川保夫防衛相と山岡賢次消費者相を交代させるとともに、税と社会保障の一体改革を進める態勢の強化をめざすという。

 どんな理由をつけるにせよ、昨年と同じ展開だ。

 野党は問責閣僚が出る国会審議には応じないと突っ張る。政権は閣僚を守ろうとしつつも、結局は通常国会の召集直前に、内閣改造の形をとって閣僚の首をすげ替える。

 政治の現状への危機感を欠いた、相も変わらぬ与野党の突っ張り合いである。まったく見るに堪えない。

 私たちは、参院が法的拘束力のない問責決議で、閣僚のクビを飛ばすような事態には問題があると主張してきた。いまも、その考えに変わりはない。

 しかし一方で、一川、山岡両氏に限れば、閣僚としての資質に疑問があることも否定できない。とくに沖縄の信頼を失った一川氏について、私たちは速やかな更迭を求めてきた。

 いま、野田政権が最優先にすべきは一体改革の実行である。そのためには、与野党協議を急がねばならない。問責閣僚を続投させることで、野党に拒否の口実を与えるくらいなら、内閣改造で事態の打開を図るのは妥当といえる。

 「ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ」。首相は年頭の記者会見で、チャーチルの言葉をひき、「大義のあることを、あきらめないでしっかり伝えていくならば、局面は変わる」と述べた。

 しかし、言葉にいくら力を込めても、現実は動かない。「大義」を掲げるだけでなく、野党を引き寄せる具体的な手だてを講じる必要がある。

 ここは考えどころだ。一体改革とともに与野党協議が欠かせない重要な課題が並んでいる。

 たとえば、(1)国会議員の定数削減と一票の格差の是正(2)国家公務員給与の削減(3)郵政改革の3点について、政権与党として、野党の主張にどこまで歩み寄れるのか。最大限の譲歩案を大胆に示すべきだ。

 野党の出方を見ながら、小出しに妥協していくのではなく、与党の側から切れるカードをさっさと切る。

 それは、国民に対して、政権の覚悟を示すことでもある。

 その譲歩案に説得力があれば、それでも協議を拒む野党に国民の批判が向かうはずだ。

 衆参ねじれのもと、政権与党は、国民の支持を求めて捨て身の対応をするしかない。

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沖縄の発展―南国の力いかす産業を

 沖縄は今年5月に、日本復帰から40周年の節目を迎える。

 復帰後の沖縄は、基地、公共事業、観光の「3K依存経済」と呼ばれ、ものづくりは弱かった。広大な米軍基地とそれに伴う事故や事件が絶えぬという、沖縄に極端に重く残る第2次大戦後の負担から脱する今後のためにも、産業の自立が必要だ。

 いま、沖縄が恵まれる自然を生かし、世界市場も狙えると期待される企業が芽吹いている。

 沖縄本島中部のうるま市のサウスプロダクトは海藻のオキナワモズクに目をつけた。モズクの種から光合成に働く色素たんぱく質をとり出し、太陽電池の材料にする研究を大阪市立大と進める。実用化の道のりは険しいが、発電の夢を育てたい。

 亜熱帯にある沖縄は、海も陸も多種多様な生命の宝庫だ。未利用の資源や産業の芽になるものはふんだんにある。

 沖縄本島北部の赤土はやせた土壌で、これまでパイナップルかサトウキビしか栽培できないと考えられていた。紅茶づくりを思いついたのは内田智子さん(45)だ。高級品「琉球紅茶」の生産に成功した。欧州の専門家から絶賛され、「沖縄ティーファクトリー」からフランスへの輸出が今月始まる。

 日本の国内総生産(GDP)に占める沖縄の経済規模は比率0.7%。復帰後10兆円以上つぎ込まれた沖縄振興費の多くは公共事業に使われた。埋め立てによる県土の増加率は毎年、全国で1、2位を争う。

 沖縄県は復帰後、石油備蓄基地を誘致し、うるま市の宮城島と平安座(へんざ)島の間を埋め立てた。住民は「金武(きん)湾を守る会」をつくり、激しく反対した。

 その精神的支柱になったのが安里清信(あさと・せいしん)さん(故人)だ。「石油基地から入る金などは幻のようなものです。だが、たとえばモズクとなると未来にかけて、これは永遠でしょう」。海の大切さを安里さんは語った。

 備蓄基地はできた。だが地元の繁栄にはつながらなかった。古老が予言したように、モズクをはじめ、南国の恵みを生かすバイオ産業分野の技術などをさらに伸ばしたい。

 もちろん、自然に由来する産品だけでは力が足りない。既存のIT特区など沖縄経済のために始まった制度を実際に地元の役に立て、足腰の強い産業の創出と雇用確保につなげたい。

 沖縄の苦難に報いることは、沖縄戦や占領期を経て本土にとって誓約だったが、まだ果たせていない。基地問題の解決とともに、産業の発展にも力を合わせてあたる必要がある。

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