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「対外関与と国力の均衡を保つ。それが外交政策である」米国の評論家ウォルター・リップマンは第2次大戦中、戦後世界への米国の関与について、こう指摘した。関与がいき過ぎれば、[記事全文]
超高層ビルが、ゆーらゆらとゆっくり揺れる。しかも、その揺れはこれまでの予想をはるかに上回って長く続いた。東日本大震災のとき、首都圏のビルが初めて本格的に体験した、周期数[記事全文]
「対外関与と国力の均衡を保つ。それが外交政策である」
米国の評論家ウォルター・リップマンは第2次大戦中、戦後世界への米国の関与について、こう指摘した。関与がいき過ぎれば、国力の衰退をもたらす、という警鐘である。
いま、オバマ米大統領も改めて、この言葉をかみしめていることだろう。
大統領は新たな軍事戦略を発表するなかで、国防費の大幅な削減の必要性を強調し、「10年に及ぶ戦争のページをめくる」と宣言した。
なにしろ、アフガニスタンとイラクでの対テロ戦で、軍事費は2倍近くに膨らんだ。いまや年間7千億ドル(約54兆円)規模にのぼる。一国で世界の軍事費全体の半分を占めているのだ。
一方で、米国の経済力はすでに世界の国内総生産(GDP)の2割を切っている。この偏重ぶりは異常であり、軍事費バブルさながらである。
「最大の脅威は雪だるま式に膨らむ対外債務」という声が議会で強まり、今後10年間で最低4900億ドルの国防予算の削減が義務づけられた。財政全体の赤字縮小案がまとまらないと、さらに削減される見通しだ。
軍事費に大なたをふるうことで、海外に展開する兵力は大幅に削減される。軍事力を背景に担ってきた「世界の警察」の役割も、それにあわせて変わらざるを得なくなった。
新戦略では、二つの大規模な紛争に同時に対処できる二正面戦力の維持はしない。限られた軍事費を、米国の国益により直結する地域へ集中させる。
それでもアジア重視の方針には変わりがない、という。大統領も「予算を削減しても、この重要な地域を犠牲にすることはない」と断言している。
米国の将来がかかる地域で、中国の影響力が増すことへの強い警戒心があるのだろう。急速に近代化する中国軍には、海空両軍の統合作戦能力と日本などとの同盟関係の強化で対抗する姿勢を明言している。
海兵隊のオーストラリア常駐など新たな米軍の展開が、地域全体にどう影響するかは、まだ見えない。その中でも普天間基地を含む沖縄の負担軽減は、改めて真剣に探る必要がある。
米国の兵力削減は、一時の政策ではない。もしも今秋の大統領選で政権が交代しても、流れは変わらないだろう。
この新戦略を新たな対決の幕開けにせず、地域の長期的な緊張緩和と安定につなげる。そんな知恵と努力が、日本を含む各国に求められる。
超高層ビルが、ゆーらゆらとゆっくり揺れる。しかも、その揺れはこれまでの予想をはるかに上回って長く続いた。
東日本大震災のとき、首都圏のビルが初めて本格的に体験した、周期数秒の揺れ、いわゆる長周期地震動である。
巨大地震がもっと近くで起きれば、さらに大きい揺れが予想される。
おおくの人々が暮らし、仕事をする超高層ビルは、壊れないことはもちろん、エレベーターなどもできるだけ早く復旧させることが必要だ。
気象庁は昨年、長周期地震動の予報をめざして検討会を立ち上げた。予報を生かすためにも、まずは備えが肝心だ。
建物には揺れやすい周期があり、それが地震の周期と一致すると大きく揺れる。短い周期は主に木造住宅を、長い周期は高いビルを大きく揺らす。
長周期の揺れは、巨大地震に伴って起きることが多く、遠くまで伝わるのが特徴だ。
03年の十勝沖地震(M8.0)では、震源から約250キロ離れた苫小牧で原油貯蔵タンク火災が起き、注目された。
日本建築学会によれば、オフィスビルや住宅など、高さ60メートル以上の超高層ビルは国内にざっと2500棟ある。その9割が長周期の揺れを増幅しやすい地盤の東京、名古屋、大阪の各都市圏に集中している。
なかでも、周期2秒以上の揺れで共振しやすい高層ビルは約1100棟ある。東海・東南海・南海の3連動地震が起きても崩壊の恐れはないとみられるが、大きな被害が予想される建物も数十棟あるという。
東日本大震災で、新宿センタービル(54階建て、高さ223メートル)は、約13分間にわたって揺れを記録した。これまでは短時間の揺れしか考慮せず、国土交通省は500秒以上への対応強化を検討中だった。それを、さらに上回ったことになる。
まずは、ビルが壊れないための耐震補強が重要だ。新宿センタービルでは、振動を吸収する装置を09年につけていたため、大震災での揺れの大きさを約2割減らせたという。
建築学会は、25〜30年ごとのビルの大規模改修の際に、耐震診断と補強を合わせて行うことを提言している。
さらに、室内の家具類を固定する。少なくとも1基のエレベーターには、ロープが絡まらない耐震性能を持たせる。加速度計を設置して、地震後の素早い危険度判定に役立てる。
こうした、さまざまな対策を重ねることが大切だ。