HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 32422 Content-Type: text/html ETag: "9dbf02-5ee7-25d6a100" Cache-Control: max-age=4 Expires: Fri, 06 Jan 2012 23:21:06 GMT Date: Fri, 06 Jan 2012 23:21:02 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2012年1月7日(土)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

原発政策―40年で廃炉は当然だ

4月の原子力安全庁(仮称)発足にあわせた、新たな原子力安全規制の大枠が固まった。あいまいだった原発の寿命は「運転開始後40年」と法律に書き込む。過酷な事故が起きた場合の[記事全文]

一体改革―現実の厳しさを語れ

野田政権が「社会保障と税の一体改革」の素案を正式に決めた。14年4月、15年10月の2回に分けて消費税率を10%まで引き上げる。国民には重い負担増である。[記事全文]

原発政策―40年で廃炉は当然だ

 4月の原子力安全庁(仮称)発足にあわせた、新たな原子力安全規制の大枠が固まった。

 あいまいだった原発の寿命は「運転開始後40年」と法律に書き込む。過酷な事故が起きた場合の対策も、事業者の自主的な取り組みとしてしか位置づけられてこなかったのを、きちんと法律で義務づける。

 これまでの規制が原発推進と一体化していたことへの反省から、米国の原子力規制委員会などにならい、原子力基本法に基本理念として「放射線の有害な影響から人と環境を守る」ことを明文化する。

 福島第一原発の事故の教訓を考えれば、いずれも当然の転換である。

 原発の寿命について、安全庁の準備室は「原発の新設が難しいから廃炉も先延ばしするといった供給側の事情に配慮するような発想を切り離す」という。その姿勢は評価する。

 とはいえ、これはほんの第一歩にすぎない。

 すでに40年を超えて運転している原発は、東京電力の福島第一1号機以外に、日本原子力発電の敦賀1号機と関西電力の美浜1号機(ともに福井県)の2基ある。関電は7月に40年となる美浜2号機についても、運転延長が可能とする報告書を国に提出している。

 まずは、これらを例外なく廃炉にすることが試金石となる。

 ただ、40年寿命だけでは脱原発は進まない。私たちは老朽化した原発はもちろん、地震や津波の可能性が高い地域にあったり、現実的な避難計画の設定が難しかったりする原発は廃炉にしていくよう求めてきた。

 新たな規制では、最新の安全技術や運転開始の段階ではわからなかった活断層の存在などの知見を、すでに動いている原発にも反映することを義務づける「バックフィット」という制度を導入する。

 これを厳密に適用し、現時点での知見を反映させて、すべての原発の「仕分け」を早く実施すべきだ。

 また、金融機関と同様、法令違反などが発覚すれば、業務停止や免許取り消しとなるような罰則規定も必要だろう。

 問われるのは、描いた絵を本物にする実行力だ。

 新たに発足する安全庁の独立性や検査・審査能力をどう確保し、育てていくか。

 新庁の主力は原子力安全・保安院から移行する職員だ。電力会社や原発メーカーの出身者も少なくない。意識改革を通じて事業者との間に緊張感のある組織にしなければならない。

検索フォーム

一体改革―現実の厳しさを語れ

 野田政権が「社会保障と税の一体改革」の素案を正式に決めた。14年4月、15年10月の2回に分けて消費税率を10%まで引き上げる。

 国民には重い負担増である。

 政府・与党は、国会議員の定数や公務員給与の削減、特別会計や独立行政法人の改革など自ら身を削ることが欠かせない。日本経済のパイを大きくし、雇用や税収を増やす戦略の大切さも言うまでもない。

 ただ、それだけでは財政が好転しない現実を、政府・与党、とりわけ改革に意欲を示す野田首相は丁寧に説明すべきだ。

 厳しい現実は、消費税5%幅の増税分のおおまかな使途にも表れている。

 医療や介護、年金、子育てなどの社会保障制度を今より充実させる財源は1%分(約2.7兆円)にとどまる。ほかは、高齢化に伴う社会保障費の自然増▼基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げ▼税率引き上げに伴う政府の支出増▼国債発行を減らす分がそれぞれ1%分ずつ、という内訳だ。

 つまり、4%分は今の制度を維持するのに使い、財政再建につなげることになる。

 「増税は社会保障の充実のためではないのか」「財政再建のための増税は納得できない」と反発する向きもあろう。

 しかし、国の来年度の予算案では、税収だけでは90兆円余の歳出総額の半分もまかなえず、借金である国債発行が44兆円に達する。その主な要因は、歳出の3割を占め、毎年1兆円強のペースで増え続ける社会保障費にある。今の世代が使う社会保障費を、国債の形で将来世代につけ回ししているわけだ。

 国の債務残高は1千兆円に迫る。財政の先行きへの不安から国債の金利が上昇すれば、社会保障にあてるお金が足りなくなる。もはや「増税は社会保障のためか、財政再建のためか」という議論自体が成り立たない。

 今回の素案は、債務危機に揺れる欧州が社会保障給付の削減に追われる窮状に触れた。

 同様の悪循環に陥らないためにも、社会保障を支える財政の土台にぽっかり開いた「穴」を消費増税で埋めていく。その第一歩が一体改革である。

 政府・与党は近く野党に協議を呼びかける。自民、公明両党は拒否の構えを崩していない。大綱、法案づくりへと作業をどう進めていくか。

 最終的なよりどころは国民の支持だろう。であればなおのこと、野田首相は改革の必要性について、説明を尽くさねばならない。

検索フォーム

PR情報